京都・蓮久寺の三木大雲住職のもとには、助けを求める人が絶えない。ポルターガイストに悩まされている、人形をお祓いしてほしい、さまよう霊を供養成仏させてほしい……。そんな実話や自身の体験など、現代の怪談、奇譚の数々を収めた『続々・怪談和尚の京都怪奇譚』(文春文庫)より、背筋も凍る「AI音声認識」を特別公開。見えない世界に触れることで、あなたの人生も変わる……のかもしれない。
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それは、横断歩道で信号待ちをしている時のことでした。隣に立っていた若い男性が、突然笑い始めたのです。そして何かを話し始めました。
私が驚いてその男性を見てみると、耳にイヤホンがありました。そうです、携帯電話で話されていたのです。
まるで何者かと交信でもされているのかと心配しましたが、そうではありませんでした。
考えてみれば、私が若い頃には、携帯電話などありませんでした。携帯電話が出始めた頃も、最初は肩から下げる形の物で、今と比べて大変大きな物でした。
それがいつしかポケットに入るサイズにまでなり、イヤホンさえしていれば会話が出来るまでになりました。一体、人類の科学力はどこまでいくのかと想像もつきません。
実は先日、科学の発展に驚かされた事がありました。それは、知り合いのコンピューター関連会社の社長様宅に招かれた時のことです。
この方は中国ご出身の方で、普段は中国で仕事をされています。しかし、今回、日本に新しい家を建てられたとの事で、ご招待いただきました。
最新のAIプログラムを実験する家
この家は、日本滞在中に宿泊する為だけではなく、最新のAIプログラムの実験の為でもあるというのです。
私がこのお宅にお招きいただいたのは、夜の7時を過ぎた頃でした。
社長様の家の前に着くと、私はインターフォンを押そうとボタンを探してみました。しかし、インターフォンが一向に見つかりません。
そこで、玄関前から携帯電話で電話をしようとしたその時でした。機械的な音声で「どちら様でしょうか」と聞こえてきたのです。
声の出所は分かりませんでしたが、私が「三木大雲と申します」と答えると「お待ちしておりました。どうぞお入りください」と、玄関の扉が自動的に開いたのです。
さすが、AIプログラムの会社の社長様だけあって、この家はAI機能が組み込まれた家なのだと察しました。