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はびこる「PCR検査拡大は不合理」説を公衆衛生の第一人者が論破!【偽陽性の問題はほぼ100%ない】

PCR検査の徹底的拡大こそ「経済を回す」

2020/07/31
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検査体制の確立には程遠い予算規模

 日本では、感染状況を的確に把握するための検査体制の拡大が進んでいないこともあり、こうした機動的な対応が進められていない。 安倍総理自らPCR検査を増やすように言っているが、実際の政府予算を見れば、日本が検査への投資に極めて消極的であることが分かる。

 例えば第一次補正予算では、検査体制の強化と感染の早期発見と言う名目で94億円だが、その約半分は行政検査の国負担分であり、純粋な検査法確立の予算はわずか4600万円である。アベノマスクは260億円だ。第二次補正でも検査のための予算は620億円程度である。これでは、検査体制の確立には程遠い。

 仮に新宿エリアの感染が広まっていると的確に把握できれば、東京都全体での自粛というような経済的な打撃が大きく効率性も低い手法はとらずに、新宿エリアに限定して休業要請を行ったうえで、住民や従業員等に検査受診の費用補助や受診要請等を行うことにより、感染者の隔離を集中的に進めることも可能となる。

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新宿・歌舞伎町 ©文藝春秋

 ジョンソン首相は、「自分たちの初期の対応について、学ばなくてはならないことがあると言っていいと思う。当時のことから教訓を学ぶ機会は今後、たくさんあるはずだ」と述べている。コロナに関する知見は日々変わっていく。それに合わせて戦略を変えていくことは全く誤りではなく、むしろそうすべきだ。

今から実行すべき「6つの施策」

 繰り返しになるが、今からでも遅くない。我が国も検査体制の徹底的拡大、検査と隔離の推進を基本戦略として明確に位置付け、感染制御と経済再生の両立に向けて、例えば以下のようなことを即座に実行すべきであろう。

 1. 行政検査(保健所等の調査としての位置づけ)による調査の枠を外し、医師の判断のみで保険適用の検査(自己負担なし)を実施できるようにする。

 2. 医療機関、介護施設等については、全てのスタッフが例えば2週間に1度PCR検査を受ける等の具体的なガイドラインを設け、費用負担等の点で支援をする。

 3. 経団連等の経済団体に、感染状況の的確なモニタリングにも資することを踏まえ、企業の社員について定期的にPCR検査を実施することを要請する。

 4. 医療機関がPCR検査機器などを購入する際には100%補助する。

 5. 国産のPCRなどの検査試薬と自動機器の開発製造基盤構築に対して、国が積極的な投資を行う。

 6. 検査データの品質評価機関の設立と早期稼働により、信頼出来る検査データを公表し、世界の専門家が分析や政策提言等をできる枠組みを整備する。

渋谷健司氏

「日本は特別だから、大丈夫」という甘い幻想をウイルスは簡単に打ち破る。今の感染増加は「日本モデル」で抑え込んだはずで「自粛は不要だった」とさえ言われていた第一波の再燃である。検査と隔離の体制を拡充させることが、自粛を回避し経済と感染コントロールの両方を達成するために最も重要である。日本の技術でもNIHの目指す検査レベルは実現できるはずだ。今こそ検査イノベーションに投資して、自粛を回避し経済を回すべきだ。

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