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天皇陛下と愛子さま「スペイン語の同じ単語帳を…」 15年目の個人授業で私が拝見した「ご一家の素顔」

カルロス・モリーナさんインタビュー

2020/08/16

genre : ニュース, 社会

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「世界水フォーラム」をきっかけにスペイン語習得を望まれた

 新型コロナウイルスを巡っては、今なお難しい状況にありますが、こうして授業を行うことができるのを非常にうれしく思います。陛下にスペイン語の授業をはじめたのは2006年のことです。ちょうどこの年、陛下のライフワークである「水」問題の国際会議(「世界水フォーラム」)が、スペイン語を母国語とするメキシコで開催されることから、陛下はスペイン語に関心を持たれ、習得を望まれたようです。

2006年3月16日、第4回世界水フォーラム開会式であいさつされる天皇陛下 ©AFP=時事

 初めの頃は頻度も多く、会話と文法の授業を月に2、3回していました。最近は月に1回ほどです。特に初回の授業は私も相当準備をして臨み、終わった後に強い緊張感が残りましたが、今では長い期間にわたっているということもあり、私は非常に落ち着いた気持ちで参内しています。陛下はいつもしっかりと準備をされ、モチベーションを高く保って授業に参加されていることも、その一因だと思います。スペイン語をゼロから学ばれましたが、今ではヨーロッパの基準で中上級のレベルに到達されました。陛下はスペイン語でもゆっくりと確実に意見を述べられます。

間違って1度「殿下」とお呼びしてしまった

 この間、授業は4カ月ほど行われませんでしたが、公務や儀式の合間にご自身でしっかり予習と復習をされていたようで、スムーズに授業に入っていくことができました。私から何か課題を出すというよりも、復習をお勧めすることが多いですが、今回は事前に陛下がご自身で文章を考えられて、私が拝見し添削しました。

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 通常の授業では、ウォーミングアップのために日常会話から始めます。公務やご家族のこと、普段の過ごし方などについて陛下がお話しになり、私から質問をして話題を広げていきます。新型コロナウイルスへのご懸念について陛下が話されることはありませんでしたが、陛下の公務にも関わることですので、「色々な行事が中止になりました」というお話がありました。

 

 皇太子殿下から天皇陛下となられてからも、私に変わらない態度で接してくださっていると思います。初めて陛下に授業を行った時から10年以上、Su Alteza(殿下)とお呼びしてきました。即位後初めての授業で、私がそれまでの習慣もあり、間違って1度「殿下」とお呼びしてしまったのですが、その時陛下は「あれ?」という表情で和やかにお笑いになって、「大丈夫ですよ」と言ってくださいました。「陛下」はSu Majestadというのです。授業ということもありますので、先生として、生徒として……という役割を理解して参加していただいているとも思います。