阿部九段は、△1二玉を見て対局室に向かった
▲4三飛(133手目)を見た郷田九段は「豊島さんの手つきが穏やかでしたね」と言った。静かに終局に向かっていく。
立ち上がってモニター越しに対局を見守っていた阿部九段は、△1二玉(138手目)を見て対局室に向かった。終局前に立会人が盤側で見守る構図にニコ生のコメントは「圧」「投了のプレッシャー」などと盛り上がっていたが、動画中継が行われていない時代は終局が近づくと立会人が対局室で見守るのが当たり前の光景だった。
天井に盤面を映すカメラが取りつけられるようになったのは将棋界の歴史の中ではつい最近のことで、かつては観戦記者や奨励会員が対局室に入ってメモを取り、控室に指し手を伝えていた。そのような状況では、最終盤のトラブルに備えて立会人が見守る必要があったのだろう。竜王戦や名人戦の立会人を多く務めた故・大内延介九段は形勢が傾く前から対局室に入り、終局まで盤側に座っていた。阿部九段は本来の職務を遂行したにすぎない。
「ひとつ勝ててほっとしました」
21時18分、△1二玉に▲2四桂(139手目)を見て永瀬は投了した。これでシリーズの成績は永瀬2勝、豊島2勝(そして2つの持将棋)のタイになった。手数は139手と、この七番勝負にしては短かったが、これでも将棋の平均手数よりは長い。
感想戦は終盤を中心に30分ほど行われた。感想戦のあとに行われた勝利者インタビューで豊島は「連敗が続いていたのでひとつ勝ててほっとしました。持将棋があったので、第8局まで行きたいという気持ちがありました。次局以降も全力を尽くしたい」と語った。
5歳から通ったホームグラウンドで大きな1勝を挙げた豊島。第7局はいよいよ、叡王戦初、6時間の持ち時間で指される。第8局と第9局の対局規定も発表された。果たして、第9局までに決着はつくのだろうか。永瀬と豊島の夏はいつまで続くのだろうか。
写真=諏訪景子
INFORMATION
第5期叡王戦七番勝負第6局 棋譜
http://www.eiou.jp/kifu_player/20200801-1.html
第5期叡王戦七番勝負第7局(2019年8月10日09:30放送開始)
https://live2.nicovideo.jp/watch/lv326756675
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