永瀬拓矢叡王(27歳)に豊島将之竜王・名人(30歳)が挑戦する、第5期叡王戦七番勝負。第5局を迎えて、対戦スコアは1-1。
既に千日手1回、持将棋(引き分け)2回という前代未聞の出来事が起こった。決着がつくまでに何局行われるのだろうか、そういう話題があちらこちらで聞こえてくる。
観る将にとっては絶好の引きこもりイベント
第5局は4連休の初日、7月23日(木、祝)に千駄ヶ谷の将棋会館で行われた。もともとこの4連休は東京オリンピックを想定して設定されたものだ。7月24日が開会式予定日だったため、「体育の日」(10月の第2月曜日)を「スポーツの日」と改称して移動。いくつかの五輪イベントの予選が開会式の前に7月23日からスタートするのに合わせて、海の日を7月20日から7月23日にスライドさせた。
コロナ禍で海水浴場もほぼ閉鎖され、オリンピックも延期になって、4連休だけが残ってしまったのはなんとも寂しいが、将棋ファンにとっては願ってもない連休だ。本局が連休の開幕日に、連休2日目には藤井聡太棋聖の竜王戦本戦、連休3日目にはAbemaTVトーナメントと、観る将にとっては絶好の引きこもりイベントが続いている。
本局の観戦記を書くに当たって、あいにくの雨だったためタクシーでの移動も頭をよぎったが、千駄ケ谷駅から将棋会館まで歩くことにした。そう、観戦記は駅から既に始まっているのだ。
駅から出ると、目の前に巨大な国立競技場が飛び込んでくる。開会式など、たくさんのイベントが行われるはずだったが、シーンとしている。
対局者に聞こえたりしないのだろうか
国立競技場を左手に見ながら進むと、正面に鳩森神社が見えてくる。
「盆おどり大会」の提灯が目に入るが、今年は盆踊りもオンラインでやるらしい。オンラインの盆踊りとは全くイメージがわかないが、みなさんはどうだろうか。鳩森神社を右手に角を曲がると日本将棋連盟の本部・将棋会館だ。
本局は、将棋会館の特別対局室で行われた。
一方、取材陣の控室は同じフロアで、ほんの20メートルほどの距離の場所。あまりの近さに正直驚いた。もし誰かが驚いたりして大声を出したら、対局者に聞こえたりしないのだろうか。対局室と控室の間には、ふすまが合計4枚あるものの、それぞれにすき間が空いているようなもので防音もしっかりしている感じではないからだ。
しかし、控室でそれなりの音量で話しても、対局室には全く聞こえないとのことだ。将棋でも「4枚の攻めは切れない」というが、やはり4枚のふすまは聞こえないのか。
筆者はもともと将棋部に所属していて、学生の大会などは何度も出場したことがあるが、プロ棋士の対局を観戦するのは初めてだ。職業はポーカーのプロである。