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「まったく同じ動きには固執しないようにしています」

 7月には練習中とはいえ、73ヤードというマンガのキャラクターも驚く距離のフィールドゴールを決めた。フィールドゴールの日本記録は58ヤード、NFLでも64ヤードが最長だ。

「キックのときは距離が遠いからと言って動きを変えることはしないんです。再現性が重要なので、むしろ力が要る時ほどいつもと同じルーティンで蹴ることを意識していますね。感覚的ですが、80ヤードくらいまでは決められるイメージはあります」

 

 同じ動作を繰り返すキッカーというポジションだが、これまでスランプのようなものはないという。

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「自分の身体は常に変化するもの。だからこそ、まったく同じ動きには固執しないようにしています。同じ動きに“戻す”という考え方ではなく、少しずつアップデートしていく。そう考えるとイップスのようなことにもなりにくいのかもしれません」

「現役を終えても、動作解析を通じて最高のキックを追い求めていきたい」

 こだわるのは、あくまでベストなキックができるかどうか。山崎はそこに人生を懸けている。

 

「個人的にはあくまでキックの探求が最終目的であって、NFLは通過点という風に考えています。キックの動きや効率を追い求めれば、結果的に世界一の舞台に行かざるを得ない。キックとひとことで言っても色んな蹴り方がありますよね。フィールドゴールひとつとっても、極端な話、60ヤードまではどんな蹴り方でも決めることができると思うんです。でも、90ヤードを決めようと思ったら最適な動作があるはず。いまはその解を突き詰めていきたい。将来的には現役を終えても、動作解析を通じて最高のキックを追い求めていきたいですね」

 北米4大スポーツで、未だ日本人が到達できていない最高峰の舞台・NFL。そこに最初の足跡を刻むのは、マンガを超える型破りな“キックの探求者”かもしれない。

写真=末永裕樹/文藝春秋