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日本人初NFL目指す26歳 武器は『アイシールド21』超え73ヤードキック

オービックシーガルズ・山崎丈路選手に聞く

2020/08/19
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「キックを蹴る場面って『時間を止める』瞬間を作れるんですよね」

「阪大は関西リーグ2部のチームだったので、部員もそこまで潤沢にいるわけではなく、ポジションも色々やりました。でも、そこで最初から一番将来性を感じたのがキッカーというポジションでした。感覚的な話ですが、これならもしかしたら一番になれるんじゃないかと」

 もともとひとつのことを細かく突き詰めるのは好きだった。高校時代には苦言を呈された“球蹴り”の探求こそが、キッカーとしては利点になる。楕円球を蹴るという動作を考え続けるという、そのシンプルさは山崎の心に響いた。

 加えて、ゲームでの役割にもやりがいを感じたと言う。

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「試合中、キックを蹴る場面ってキッカーが『時間を止める』瞬間を作れるんですよね。自分が蹴ったボールがゴールに届くまでの時間は静寂で、その瞬間を自分が作り出すことができる。そして、その結果次第でゲームの雰囲気を一瞬で変えられる。そういう部分にもすごく魅力を感じました」

 そうしてキッカーとして競技に打ち込み始めた山崎は、少しずつ実績を積んでいく。大学2年時には春に骨折した影響も有り、キッキングに専念することができたため、自ら連絡を取って社会人チームの練習に積極的に参加。大学のオールスターチームのトレーニングにも交ぜてもらったという。

日本のトップクラスのキッカーがほぼ所属するJKAに出会う

 大きなチャンスが訪れたのは、大学3年のことだった。SNSを通じ、日本の優秀なキッカーを本場・NFLに送り出すための組織「ジャパン・キッキング・アカデミー(JKA)」に出会ったのだ。

 

「JKAでトレーニングをする中で一番感じたのが、キックが失敗したときの考え方です。自分の中でどんなエラーが起きていたのか、どこをどう修正すればいいのか、キックという動作を細分化して考えるようになりました。また、その細分化した事象がすべて繋がって一連の動作になっている。ひとつの動きだけに固執するのではなく、全体的な流れも重視するようになりました」

 日本のトップクラスのキッカーがほぼJKAに所属していたこともあり、そこでの意見交換も大きな糧となった。それまでは感覚的にキックを捉えていた部分も大きかった山崎にとって、ここでの経験は大きな飛躍のきっかけとなった。

「JKAの支援もあって、大学4年の冬に渡米し、元NFL選手が主催するトライアウトに参加することができたんです。最初はパワーの面や技術面で差があるかなと思ったんですが、やってみると実力的には十分、勝負できると思うようになりました」