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「レジェンドチームがここまで勝ち進むとは……」

 準決勝チーム永瀬「バナナ」VSチーム康光「レジェンド」を解説したのは、「レジェンド」の森内九段と同じ1970年生まれの藤井猛九段だ。「本当に申し訳ないことを言うと、若い棋士がずっと有利に思えるこのルールで、レジェンドチームがここまで勝ち進むとは思ってなかった。びっくりしました。失礼ながら」と話す。

解説者としてもファンから絶大な支持を集める藤井猛九段。いわゆる「羽生世代」の一人

「昔はチェスクロック(今回も使われているデジタル式対局時計)なんてなくて、35年くらい前、奨励会にいた10代半ばごろに普及してきた。チェスクロックを初めて練習対局に使いだしたのが1歳上の佐藤さん(康光九段)や森内さんの世代。特に森内さんは10秒とか短い持ち時間の将棋をバシバシ指して鍛えていましたね」

 ダントツに平均年齢が高い「レジェンド」が勝ち進んできたことにはファンからも称賛の声が多くあがったが、準決勝の前に「レジェンド」の佐藤康光リーダーに「準決勝まで勝ち進んだことへの満足感はあるのか」聞いてみたところ、「いいえ、ここからです!」というきっぱりとした返事が返ってきた。

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「会長」の激務をこなしながらも順位戦A級に在籍する佐藤康光九段

 チーム永瀬「バナナ」は、タイトルホルダー2人を擁し、優勝候補と言われているチームだ。しかし、ここまで来るのは簡単ではなかったと「バナナ」の3人は話す。特に予選のチーム広瀬「大三元」には苦戦し、予選は2位通過だった。

「『大三元』には途中1勝5敗と差を付けられ予選落ちが見えるピンチでした。力を合わせて乗り切ることができて、チームの仲が深まったと僕は思っています」(増田六段)

「あんなに精神的に追い込まれるピンチはなかなか経験できない。3人の棋士人生にとっても良い経験になったと思います」(永瀬二冠)

「予選では(広瀬八段に2連敗し)迷惑をかけてしまったので、2人が勝ってくれて非常に嬉しかったです」(藤井棋聖)

これほど敗者が惜しまれる棋戦があっただろうか

8月1日 準決勝第1局結果(ABEMAより)

 8月1日の準決勝第1局では、2勝1敗と先行された「所司一門」がその後4連勝。決勝進出を決めた。

8月8日 準決勝第2局結果(ABEMAより)

 そして、8月8日の準決勝第2局では3-0とリードした「バナナ」の圧勝かと思われたが、「レジェンド」が2勝を返し、ファンは大盛り上がり。最後は藤井棋聖が勝って5-3とし「バナナ」が決勝進出を決めた。

 準決勝第2局の終了後、人気を集めていたチーム康光「レジェンド」のチームTwitterがツイートを終了することが3人から発表されると「やめないで」のほか、「3人のここまでの戦いぶりを楽しませてもらった」というファンからの感謝もたくさん寄せられた。Twitter上には「レジェンド」がトーナメントを去ることを悲しむ声があふれた。

 本戦は1戦ごとに1チームが負けて姿を消していくノックアウトトーナメント方式。王座戦本戦、棋聖戦本戦など多くの棋戦で取り入れられている一般的な方式で、最後に勝ち残った1人が優勝者やタイトル挑戦者になる。第3回AbemaTVトーナメントでは1チームが姿を消すごとに、ファンはそのチームの対局がもう見られないことを嘆き、これまでの戦いに称賛を送っている。

 かつて、これほど1戦ごとに敗者が惜しまれる棋戦があっただろうか。チーム戦という特殊性や、作戦会議を見せたり、司会の女流棋士による頻繁なインタビューで棋士の人間性や関係性を見せるこの企画に、視聴者がはまっているようだ。