昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2019年M-1・全員インタビュー なぜ“神回”になったか

2020/08/23

「2017年のゆにばーすさんがカッコよくて…」

桒山 わかってます、わかってます。万が一操作してたとして、それが発覚したら、全ての信頼関係が崩壊してしまいますからね。そうしたら、漫才師の皆さんが自分たちの本気をM-1にぶつけてくれなくなる。我々はそれをいちばん恐れているわけです。そもそも笑神籤を導入するときも、芸人さんに対して失礼なんじゃないか、という議論はありました。トップ出番になった人が焦ってミスをしたらどうするんだ、と。あとは、自分たちの名前が呼ばれて、ネタをする直前の真剣な表情を撮られるのも嫌なんじゃないかな、とか。不安もたくさんあるし、それをはねのけてくれるのが漫才師の皆さんだと思う気持ちもありました。

 その上で、導入1年目のトップバッターがどうなるかにすべてがかかっていました。2017年の1番目は、ゆにばーすさんでした。そうしたら、袖で待つ川瀬名人さんとはらさんが一瞬、映ったのですが、背筋を伸ばして、颯爽と登場ゲートに駆けていったんです。その姿がカッコよくて。芸人魂を見た気がしましたね。しかもネタも抜群で、会場もものすごく盛り上がりました。あの瞬間にスタッフとしては、笑神籤方式でも漫才師さんは戦ってくれる、と思えたんです。

2017年大会。初の笑神籤方式でトップバッターになったゆにばーす。颯爽と登場ゲートに駆けていく ⒸM-1グランプリ事務局

「ミルクボーイ駒場さんの号泣シーンで何十回も泣いてます」

――袖にいる芸人さんの真剣な表情を映すか映さないか、で迷うものなんですね。私はそこもM-1の醍醐味の1つだと思っているのですが。つまり、もっとも素の表情を見せたくない芸人たちが、緊張したり、泣いたりしてしまう。素にならざるをえない。そこが素敵だな、と。でも撮る側としては葛藤があるわけですね。

桒山 ありますね。それこそ、昔はご法度だったものを映してしまっているわけですから。化粧を落としたピエロを撮っているようなものじゃないですか。なので一部の芸人さんからは、あんなところを見せるもんちゃうでとよく言われます。ただ、最近は、視聴者側も慣れてきてますよね。芸人さんって、適当に面白おかしくしゃべっているように見えて、実は、頭の回転がおそろしく速くて、陰で血の滲むような努力をしているんだ、とか。そういうものも含めてファンになったりしていると思います。

――M-1の舞台裏に密着したドキュメンタリー「アナザーストーリー」の最後、ミルクボーイの駒場(孝)さんが号泣するシーンとか観たら、余計ファンになりますもんね。

©山元茂樹/文藝春秋

桒山 あれね。僕も何十回も観ていますけど、観るたび、泣いてますもん。

――あれを観て泣かない芸人はいないらしいですね。

桒山 特に駒場さんは芸人さん仲間の間では絶対、泣くようなタイプの人間じゃないと思われていたらしくて。なので、余計に涙を誘うんでしょうね。

【続き】スタッフ1000人が作るM-1、驚きのウラ側「1日で高級マンションが買えるくらいおカネ使ってます」 へ)

この記事の写真(7枚)

+全表示

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー