「シネコン時代になって、昔と違ってポスターを刷らなくなっちゃったんですよね。アメリカから輸入するにも値段が高くなっちゃって、どうしようかなあと思ってたころに持ってきてもらえるようになったので。場所があるということは、そこを使って誰かの役に立てるという意味があるので。だから、こうやってポスターを貼ったりとか、あとロケ場所を提供したりして役に立てればという形でね。自然な流れのなかで、ご縁をちょっと大切にしていこうかなという感じですかね」
最後に頼んだラーメンは……
さて、そろそろラーメンをいただくことにしよう。正統派のラーメンも捨てがたいのだが、メニューを眺めていたら、「玉子そば(とろ~りかき玉あんかけ)」というものを発見した。
これは、非常に気になるところだ。そこでお願いし、誠一さんが厨房に戻られてからは、再びゆるやかな時間を楽しむことにする。真っ赤な壁に貼られたポスターやチラシが、空間のほどよいアクセントになっている。
誠一さんはご自身について「いや、ほんとに、流れるまんまに来ちゃった感じです」とおっしゃるのだが、こうした店内のディスプレイにすら、誠実な人柄が間接的に反映されているように感じる。
細めの麺が香ばしい!
などと考えながらチラシやポスターを眺めていたら、ほどよいタイミングでお待ちかねの玉子そばが届いた。見るからにうまそうなルックスだ。シンプルな醤油ベースのスープはすっきりしているが、かき玉の餡掛けと絡み合うとまた違った奥深さが味わえる。
細めの麺は小麦の香りも香ばしく、するすると喉を通過していく。
「ひとつひとつつくってるので、毎回が勝負じゃないですか。そういう意味では、気を使うところも多いですよね。だから同じものでも、常に悩みながら、これでいいのかなと悩みながらつくってるので」
玉子そばを注文する直前に誠一さんの口から出た、そんなことばに強く納得できたのだった。
撮影=印南敦史
INFORMATION
安楽
東京都武蔵野市中町1-10-5
営業時間 11:00~22:00
定休日 日曜日
春巻き(2本) 400円
焼き餃子 550円
厚揚げのうま煮 750円
ナスと挽肉の油炒め 800円
玉子そば 750円
キリンラガービール(中瓶)550円