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本丸「篠原」を占拠していれば…

 しかし、分裂から5年経った今、神戸山口組は苦境に立たされている。主要団体の離脱が相次ぐなど、設立当時の勢いを失っているのだ。

 なぜ神戸側は主導権を握れなかったのか。山口組の事情に詳しい別の指定暴力団幹部は、神戸山口組側の5年前の分裂直後の不手際を指摘する。

「山口組が分裂した時に、出て行った神戸山口組の連中が『篠原』の本家に大挙して押しかけて占拠して、6代目(山口組)側が使用できないようにしてしまえばよかったのではないか。神戸山口組はあのとき、占拠するどころか出て行ってしまった。なぜ本丸を押さえなかったのか不思議でしょうがない」

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 ここで言う「篠原」とは、山口組本部のことを意味する。神戸市灘区篠原本町にあるため、暴力団業界では山口組本部は通称「篠原」と呼ばれている。この幹部がさらに続けた。

「篠原に陣取ってしまえば、(6代目組長の司忍を輩出している)弘道会は、拠点のある名古屋に引っ込まざるを得なかった。『正当性は神戸山口組にあり』と宣言できたはずだが、そうしなかった。逆に、神戸山口組は篠原を放置したことで、周りには『勝手に出て行った』という印象を与えてしまった。立ち上がった時の作戦から上手くいっていない」

家宅捜索が行われた際の山口組総本部(神戸市灘区) ©️時事通信社

 しかし、主要拠点である「篠原」をそう簡単に手に入れることなどできるのだろうか。

「分裂した時期、山口組も世間同様に夏休みだった。定例会などの行事もなく、本部に幹部が不在だった。だからこそ、離脱だの分裂だのというクーデターみたいなことが出来たし、篠原を一気に押さえられる可能性もあったはずだ」(同前)

止まらない抗争、そのとき警察は…

「篠原」を押さえなかったことが神戸山口組側の作戦ミスだったのかどうかは分からないが、その「篠原」は今や6代目山口組側も本部事務所として使用することは事実上、不可能となった。

 というのも、2019年10月に6代目山口組若頭の高山が出所して以降、抗争事件が相次いだことから、公安委員会が双方を特定抗争指定暴力団とし、神戸市を含む6府県10市を警戒区域に設定し、その区域内の事務所への立ち入りが制限されたためだ。

(写真はイメージ)©️iStock.com

 それでも今年5月には岡山市内の市街地で神戸山口組系池田組幹部の銃撃事件が発生するなど、依然として銃撃事件などは続発している。5年の時間は経過したが、いまだ警察が対立抗争を抑え込むまでには残念ながら至っていない。(敬称略)