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「赤ちゃんポスト」は誰を救うのか――“ゆりかご”に子どもを預ける親の共通点

2020/08/27
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台東区の赤ちゃん置き去り死事件、母は慈恵病院に電話していた

 7月24日に台東区で30歳の母親が仕事のため家を空けた16時間の間に生後3ヶ月の赤ちゃんが死亡する事件が起きた。この母親は警察に通報する前に慈恵病院がゆりかごと並行して行っている「SOS電話相談」に電話していた。電話を受けた相談員が「赤ちゃんが息をしていない」と聞き、救急車を呼ぶよう助言し、事件となった。

 思わぬ事態に慌てたであろう女性が慈恵病院に電話するにあたって、女性はゆりかごについて前もって調べていたのではないか、そう蓮田副院長は推し量った。

「女性は自宅出産だったこともわかっています。もしかすると、一人で子育てするのが難しい事情があって、ゆりかごに預けたいという考えが頭によぎったことがあったのかもしれません。移動の費用の問題やコロナの影響で熊本に連れてこられなかったとすれば、残念なことです。小さな子どもが親にちゃんと育てられずに死んでしまう事件が起こるたびに『子どもがかわいそう』と世間は反応しますが、またすぐ次の『かわいそう』が起きることの繰り返しです。そうならないためにはどうすればいいのか、ゆりかごの現場にいると常に突きつけられているような思いがします」

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「こうのとりのゆりかご」のドア ©️三宅玲子

 ゆりかごは本来あってはならない仕組みだ。ゆりかごをなくすためには、ゆりかごにたどり着く女性たちの生育歴に潜む「私たちの社会は子どもを大切にしているのか」という問いかけを受け止め、子どもとの関わりを変えることから始めるしかない。そのことは、ゆりかごから社会に送り出された子どもたちを大切にすることと矛盾しないはずだ。

「赤ちゃんポスト」は誰を救うのか――“ゆりかご”に子どもを預ける親の共通点

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