スジを通してフル規格を建設すべきだ
佐賀県にとってフル規格新幹線のメリットは大きい。山陽新幹線と直通できる。大阪をはじめ山陽地域の都市と直結できる。名古屋も新大阪乗り換え1回で行ける。佐賀県にはトヨタ・レクサスの部品を作る「トヨタ紡織九州」があり、自動車用ランプ製造の最大手・小糸製作所の大工場「小糸九州」がある。トヨタ本社がある愛知県や瀬戸内海工業地帯と佐賀県を結ぶビジネス需要は大きいだろう。
私が博多駅から佐賀駅まで特急「かもめ」に乗った時、新鳥栖駅で新幹線と在来線特急を乗り換えるスーツ姿のグループを見かけた。おそらく本州からのビジネス出張組だ。乗り換えなしだったら彼らにとって便利だろうと思う。
そして、これは私の願望も含めた予測だけれど、リニア中央新幹線が名古屋まで開通した場合、九州新幹線直通列車を現在の新大阪発着から名古屋発着に延伸することも検討されるだろう。JR東海としてもリニア中央新幹線の集客を増やしたいはず。東京~名古屋間だけではなく、新大阪・山陽・九州方面との乗り継ぎを考慮すると思う。
新幹線のライバルとなる空路をみれば、名古屋~佐賀便は2003年に休止、大阪~佐賀便も2011年に休止された。航空会社からはジェット機の座席を埋めるほどの需要がないと思われている。しかし新幹線であれば、佐賀と長崎の需要も含め1時間につき1本を確保できて便利だ。そして、おそらく佐賀県側も、このメリットは理解できているはずだ。
また、佐賀県内でも西部の武雄市、嬉野市とその周辺はフル規格新幹線を望んでいる。
問題はスジを通すか通さないか。並行在来線の議論をしっかりやって、佐賀県の合意を取り付けることだ。まず、国は整備新幹線建設のキホンに立ち戻るべき。国が決めた枠組みを国が守らなくてどうする。
西九州ルートはフル規格新幹線が最適だ。それは誰が考えてもそうだ。だから最終的な結果としてフル規格新幹線を建設することになるとしても、やはりスジは通さなくてはいけない。佐賀県の合意なしにフル規格新幹線を進めるいまの状況はおかしい。きちんと手順を踏まないと「国や周辺県が合意すれば、当該県の納得なしに公共事業が進められてしまう」という悪しき前例ができる。佐賀県は地方自治の根幹を守る防波堤かもしれない。