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2020/09/04

石破茂 ★5.0 ネトウヨに嫌われる「“まとも”な自民党議員」

 私はポスト安倍候補者のなかでは石破さんを一番推しています。実際に何度か対談させていただいたことがあるのですが、自民党内の杉田水脈氏や長尾たかし氏などの“人権意識を欠いた問題議員を許容する空気”について、石破さんははっきりと私に「(こういった風潮は)異常である」と断言しました。この一点を以ても、石破さんは極めて「まとも」だというのが私の評価です。

石破茂氏 ©文藝春秋

 石破さんがネトウヨから嫌われているというのも、高評価の根拠のひとつです。私は、ネトウヨに嫌われている自民党議員は逆に評価すべきだと思っているのですが、石破さんは見事に当てはまっている。ネトウヨの拒否反応の濃淡が「政治家としてまっとうか否か」を測るリトマス試験紙の役割を果たしてくれているのです。

 とはいえネトウヨも、2018年の総裁選で安倍総裁と単騎決戦した「反安倍議員」という一点のみで石破さんを嫌っているのでしょう。石破さんは侵略戦争の反省という戦後民主主義的価値観を重んじながら、現実的な防衛政策、とりわけ「本命」である憲法9条2項の改正を主張しています。彼こそが本当の保守本流なのに、それすらよくわからないで、対米追従と嫌韓・反中こそ「保守」であると錯覚しているものが石破さんを「左翼」などと批判しているだけです。これは「保守」の劣化以外の何物でもない。憲法9条2項を変えるという石破さんが「左翼」なら、全世界が左翼と極左急進主義の巣窟になってしまう。石破批判の理屈は荒唐無稽なプロパガンダです。

石破茂氏 ©️文藝春秋

中曽根康弘氏と同じ、対米“面従腹背の思想”を持つ

 もう一点、石破さんが宰相に適格だと考えるのは戦後日本政治の構造的矛盾を認めているからです。

 私が考える宰相の条件で一番大切なのは、戦後レジームの脱却とそれに関する矛盾をどのように捉えているかという国家観です。日本には戦後続いた対米従属の構造を転換することが求められているが、第二次安倍政権で実際おこなわれていたのは更なる対米追従です。「戦後政治の総決算」を掲げた保守の政治家・中曽根康弘にはロン・ヤス関係に代表される日米同盟重視の水面下に、滾る面従腹背の思想があった。政治的理想と現状に矛盾が生じているなかで、日本の宰相にはその矛盾を認めつつ対米依存からの脱却の道筋を考えることが求められていると思っています。石破さんにはこの思想があります。