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岸田文雄 ★3.5 今出てくるべきではない「財政再建論者」

 岸田さんは河野さんのように、韓国にだけ「無礼です」とか言わないでしょうし、杉田水脈のような人権意識の欠如した議員は積極的に遠ざけていく(公認しない)であろう、非常にバランスのとれた政治家だと思います。ですが岸田さんに言えることは「今ではない」。これに尽きます。

岸田文雄氏 ©文藝春秋

 本当は★4くらいつけようかと思ったのですが、岸田さんはかなり凝り固まった財政観を持っている財政再建論者です。8月6日の時事通信のインタビューで「消費税は下げるべきではない。10%に引き上げるだけで、どれだけの年月と努力が求められたか」と語っていますが、本当にそれがいま採るべき判断なのでしょうか。好景気の時はそれで構いませんが、財政赤字が増えるからといってコロナ対策・景気対策に金を出さないわけにはいかない状況で、当然のこと弾力的な消費税減税政策が求められます。それだけに、不景気の最中での宰相としては不安が残ります。

 ただ、政治家としてはポスト安倍のなかでは石破さんの次にまともな人だと思っています。タカ派色はかなり薄いし、国際協調路線を進むはず。それに宏池会の保守本流としての伝統を受け継いでいるので、いずれ国力・自衛力を蓄えてアメリカと対等になるんだというビジョンを持っている人だと思います。コロナ禍が落ち着いて景況が安定してきた暁には、ぜひ首相になってもらいたい人です。

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 ただ、その弁舌が大味で冗長なのが玉に瑕。言っていることはおおむね正論ですが、石破さんのように論点を的確に、短い言葉でまとめることが難しい。論調演出が平凡で、ズバズバと論敵に切りかかっていくような姿勢ではない。つまり「べしゃり」がちょっと下手糞なのです。これは演説能力にも影響しますし、特にメディア戦略、選挙戦略にとって大きなマイナスです。この点でも石破さんには一歩も二歩も劣後します。