第2期ヒューリック杯清麗戦五番勝負は2-3で里見香奈清麗に負けた。7月・8月と番勝負を戦っていく中でたくさんの温かいメッセージをいただいた。将棋指しは盤の前では常に一人で考え抜き、決断をし続けていかなければならない。対局中は応援の声は聞こえないが、その心を支えてくれるのは応援してくれる人たちだ。いつも応援してくださる皆様、そして清麗戦を主催していただいているヒューリック株式会社様に改めてお礼を申し上げたい。また1歩ずつ山を登っていこうと思う。
女流棋士と棋士には棋力に差がある
番勝負終了後に少人数で打ち上げが行われた。そこで「なぜ女性棋士はまだいないのか」という話題が出た。将棋界において棋力があれば「棋士」になるのに男性も女性も関係はない。今回はこの話題について書いていきたい。
まず前提として「女流棋士」と「女性棋士」が混同されがちだが、この2つは制度が異なる。女流棋士になるためには、「研修会」という将棋連盟の育成機関に入り、B2以上などの一定の成績が必要になる。そして女性棋士とは女性の棋士であり、(男性が)棋士になるのと同様、「奨励会」という育成機関に多くの人が6級で入り、四段になる必要がある。6級から四段まで10年近く在籍することも珍しくない。研修会B2が奨励会6級入会とほぼ同じ棋力という認識があり、現状では女流棋士と棋士には棋力に差がある。女流タイトルホルダーが奨励会三段に所属しているものの、現在に至るまで四段として棋士になった女性は1人もいない。
20年前の小学生大会は99%が男の子だった
その打ち上げの席で一人は、男性には名人制度ができて400年が過ぎ、女性は女流棋士が発足して50年に満たない、「歴史の差」を指摘した。また一人は男性と女性の「競技人口の差」を指摘した。この2つはほぼ同じ意味だ。
歴史の差=競技人口の差、どちらも現状は男性に対し女性が2割行くかどうかといったところ。ちなみに私が小学生の大会に出場していた20年前は99%が男の子だったことも少なくなかったので、これでも女性の将棋競技人口は急速な増加傾向にある。ピラミッドのように、頂点の高さは底辺の広さに比例する。単純に確率論として考えるだけでも、女性棋士が誕生する難しさが分かるだろう。
偶然にも以前文春オンラインのインタビューで私達夫婦も似たような質問を受けている。
ざっくりと書くと、夫は競技人口が男女で同じなら強い女性は出てくるということを前置きした上で、男女で平均したら同じ強さにはならないと答えた。理由は長年勤めた子どもスクールで、子どもの頃に将棋にハマる割合が男の子の方が高いと感じたためだ。