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女性として1つのことに向かい続ける難しさ

 将棋はどんなに上手く指して優勢を築いても、たった1度のミスでボロボロに負けてしまう事も少なくない。0か100のゲームで、戦いの要素は強い。私個人が娘たちを通じて接する限られた子どもを見た中での見解だが、幼少期から遊びの興味の方向は男女でかなり違う。環境や個性によって変わるのは重々承知した上で、平均的に見ると戦いごっこが好きなのは男の子の方が多いと感じる。

長女と将棋で遊んだ時のピラミッド_上田初美

 一方私は、別の意味で女性として1つのことに向かい続ける難しさを感じている。

 小学生の頃は男女共に伸びる子は同じような曲線で棋力が伸びていき、中学生になったあたりから少しずつ差が出てくる印象が強い。将棋は頭を使う競技なので真っ先に男女の脳の違いに考えが及ぶ。しかしより顕著に差を見出すのであれば生理の有無、男性と女性の差の根本の方が大きいのではないかと思う。スポーツ界では生理がプレーにどのような影響を及ぼすかが少しずつ記事になって来ている一方、頭脳競技では見たことがない。今回のテーマと共にタブー視されている面があるが、避けている内は後続の人たちは同じ壁にぶつかってしまう。

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 生理中は腹痛や貧血、眠さなど様々の症状がある。痛み止めの薬を服用するなどそれぞれ対処をするが、どうしても眠気などが集中力を削いでしまう場合がある。これが月に1度あるのと、PMS(月経前症候群)がある場合、更に1週間前後心身に不調が生じる。PMSは認知度がまだまだ低いが、女性の7~8割が何かしらの症状が出るといわれている。

チャレンジしている本人には責任がない

 特にPMSについては10代後半から症状が出始め、指し盛りである20代中盤~30代中盤にかけて一番強く影響が出ると考えられている。強い眠気で詰将棋(特に深い読みを必要とする長手数もの)を解く気力がなくなったり、対局当日に症状が出ると「限界まで深く読む」のが困難になったり、私自身も経験がある。深く読むことが出来ないと当然ミスは多くなってしまうのだ。

 将棋では毎日の勉強の積み重ねと対局当日のコンディション、どちらも同じくらい重要になる。しかし、これらの症状はホルモンの影響で本人の力だけではどうしようもない。もし心当たりがあれば産婦人科などに相談し、リスクの少ない自分に合った対処法を見つけてほしい。

清麗戦の対局時につけていた家族皆の誕生石の入ったネックレス ©️上田初美

 個人差は当然あり、男性には男性の大変な部分があるだろう。ただ、性の根幹は変えられない。女性は自分の心身と上手く付き合わなければいけないタイミングが早くに来る。これから将棋が強くなりたい女の子(将棋だけに限らないが)、それを支える側の人たちには頭の片隅に置いておいてもらいたい。自分が不調になった時、原因がどこにあるかは把握した方が良い。原因が分かれば対処もしやすくなる。

 いくつか考える原因をあげていったが、これらの要素はチャレンジしている本人には当然ながら責任がない。将棋界で男性と女性という2つのカテゴリーで比較するには、先述の通り歴史も競技人口もまだまだ違い過ぎるのだ。人は新しい歴史を開く者を期待してしまう。それを期待する側としては、せめて扉を開こうとしている者が真っすぐ道を進めるように、道の舗装をしていきたい。

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