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よさこい踊りで消えた健ちゃん

 なんと! セネガルは西アフリカの西の端。そんな土地で納豆らしきものが食されていることも驚きだったが、名前がネテトウ?

 日本語そっくりじゃないか。納豆の語源はセネガルだったのか!!

 ……まあ、そんなわけはないと思うが、迷ったら面白そうな方向に進むのが私の流儀だ。

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 かくして、私たちアフリカ納豆探検隊は、「納豆」の類似商品じみた謎の「ネテトウ」の正体を突き止めるべく、セネガルの首都ダカールへ飛んだ。

 ダカールはベージュ色をした石造りの建物が砂の中にコトコトと埋め込まれたような、こざっぱりした町だった。人々が明るくのどかに歩き、子供がサッカーをしていたり、おばさんが道端でピーナッツを売っていたりして、南国らしい開放感にあふれている。

 セネガルの民族は二十程度と西アフリカではかなり少ない方である。旧フランス植民地なので、公用語はフランス語。宗教はイスラム教徒が九割近くでクリスチャンは一割に満たないが、深刻な宗教紛争や迫害は起きたことがない。世界中を席巻しているイスラム過激派やイスラム主義の思想はこの国ではまるで影響力を持っていない。治安はよく、政治経済の両面で旧宗主国との関係が安定しており、「旧フランス植民地の優等生」とも呼ばれる。

ダカール郊外の住宅街 撮影:高野秀行

 他の西アフリカ諸国から見ても異彩を放っている。

 セネガルの首都ダカールは快適かつ安全な都市で、ヨーロッパと他のアフリカ諸国を結ぶ交通の要所であり、まるで東南アジアにおけるバンコクのような立ち位置だ。

 なによりも、セネガルが際立っているのは「美食大国」としての名声である。

 サハラ以南のブラックアフリカで「ご飯がおいしい」と外国人(アフリカ人と非アフリカ人の両方)に評判をとるのはおそらくセネガル料理だけだろう。私は昔、コンゴに滞在中、現地の「セネガル食堂」で食べたことがあるが、米のご飯に煮たチキンとトマトソースがかかっていて、とてもおいしかった。アフリカでは外国料理といえば、フランス料理とか中華料理などの非アフリカ料理であるが、そのほぼ唯一の例外がセネガル料理だといえる。

 アフリカの食文化に深い興味をもつ健ちゃんはハイレベルなセネガル料理を習うべく、日本人の知り合いを介してセネガルの一般家庭へ民泊する計画を立てた。今回私たちはそれに便乗させてもらうことになったのだ。しかるに予定が狂い、なぜか健ちゃんはガーナ共和国で行われる日本祭りでよさこい音頭を踊ることになっていた(彼はセネガルの前に取材で訪れた、ナイジェリアのホテルの部屋でもよさこいの振り付けを練習していた)。

 こうして肝心の健ちゃんがよさこいで消えてしまい(三日後に合流するとのこと)、私と竹村先輩(大学時代の先輩で、納豆取材のパートナー。撮影を担当)が見知らぬセネガル人のお宅にお邪魔することになった。