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納豆の語源はセネガルにあり!? アフリカ納豆探検隊が食べた“驚きの美食”

幻のアフリカ納豆を追え! そして現れた<サピエンス納豆>#1

2020/09/17
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納豆の「アジノモト」化

 アジア大陸の多くの地方では納豆の食べ方がバラエティ豊富である。生だけでなく、煮る、炒める、蒸すなどさまざまな調理法があるし、乾燥させたり味噌状だったり、あるいは塩や唐辛子を加えたりと形状や味つけも多様だ。日本では粒かひき割りをパック売りにした形状しかなく、白いご飯にかけて食べるのが一般的だ。それに比べたら断然「納豆先進国」であり、初めて取材したときはショックを受けたものだ。

 セネガルのネテトウもひけをとらない。ネテトウを潰して乾燥させたものを砕いて粉にした商品も売られていた。「粉納豆」だ。「すぐに使える」と売り手の女性は笑った。

 ミャンマーのシャン族も同じように粉納豆を利用する人がいるが、家で手作りするだけで商品化はされていない。

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 ここの納豆は多彩であるのみならず、「即戦力」であることを求められているのだ。ある意味、「アジノモト化が進んでいる」とも言える。

 もっとも、市場を探索するうち、それはネテトウだけでないことに気づいた。野菜売り場には、みじん切りのオクラやタマネギ、あるいはニンジンとタマネギのセットなどがビニール袋詰めで並んでいる。売り場の人は客とのやりとりでただでさえ忙しいのに、その合間を縫って俎板(まないた)も使わず、両手に野菜とナイフを持ち、器用にみじん切りにしている。

調理に使う納豆(ネテトウ)を見せるマンボイさん 撮影:高野秀行

「カット野菜」が市場でふつうに並ぶ光景はアジア・アフリカを通して初めて見た。主婦の〝時短〟のためだろう。これだけでもセネガルの料理が他のアフリカ諸国とはちがう次元に達していることが察せられる。

 だが、セネガル主婦の「時短」は手抜きではない。それを思い知らされたのは買い物を済ませて、家に帰ってから。マンボイさんとカディちゃんというお手伝いの女の子が二人がかりで料理を始めたが、その凝りようが尋常でなかったのだ。ネテトウの扱い方も想像を超えていた。

 クレイジーなほどうまみを凝縮したシチュー、美味しすぎて名前が「美味しい」になった衝撃の料理…。後編では、美食大国セネガルの納豆料理を紹介する。
 

納豆の語源はセネガルにあり!? アフリカ納豆探検隊が食べた“驚きの美食”

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