多くのCEOが声を上げ始めた
24時間も経たないうちに、ツイッター中で私と同じようなメッセージがさえずり始め(まだ他のビジネスリーダーからのツイートはなかったが)、自分1人がこの道を進んでいるのではないことに安堵した。
インディアナポリスに本拠を置くNCAA(全米大学体育協会)は、「この法律が学生アスリートや従業員にどのような影響を与えるかを特に懸念している」と声明を出した。共和党を支持するインディアナポリス市長のグレッグ・バラードでさえこのニュースに反応し、同市は「企業、会議、訪問者、居住者が集まってくる心地よい場所になろうと努めてきた。私たちは多様性のある都市だ。インディアナを訪れたり、ここで暮らす、あらゆる人々に快適に過ごしてもらいたい」と語った。
その後間もなく、当社の法務部門の責任者で弁護士のエイミー・ウィーバーと政府対応責任者のジム・グリーンが、宗教の自由法を廃止もしくは修正したいと考えている志ある企業、州政府、地域団体、LGBTQ擁護団体などと連携するためにチームを立ち上げた。彼らがインディアナポリスに行って商工会議所に仮設事務所を開くと、そこは外部の擁護団体の中心拠点となった。
企業としてバリューについて本気でメッセージを発信しようとするなら、こうした取組みを人任せにはできない。そこで私は、従業員や顧客を交えてビデオ会議を始めた。友人に声をかけ、何十人ものCEOにメールを送り、夕食の席でロビー活動を行い、一緒に声を上げようと呼びかけたのだ。
企業のトップが社会問題に声を上げる困難さ
私はドアをこじ開けたが、もっと多くの人に参加してもらう必要がある。その説得は容易でなかった。多くのCEOは2015年当時、強力なプラットフォームを持っていたが、政治絡みの社会問題に加わることに難色を示した。何の連絡もくれない人もいた。そうかと思えば、株主の利益よりも自分自身の価値観を優先させていると非難する人や、インディアナ州に盾突けば「背後から狙われる」と警告してくる人もいた。
長年にわたって私のメンター役になってくれていた元国務長官で元統合参謀本部議長のコリン・パウエルでさえ、私が擁護活動を展開すれば、セールスフォースが痛くもない腹を探られかねないと警告した。「どこまで木に登るのかは注意したほうがよい。お尻が丸見えになってしまうから」。望ましくない結果が噴出するほど自分やわが社をさらけ出したのか、私は不安になりかけていた。