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脳の静脈が切れて……

 確立されている治療法としては、脳脊髄液を腹腔内へと逃がす管を挿入する、シャントと呼ばれる手術がある。洛和会音羽病院・正常圧水頭症センターの石川正恒所長によれば、頭蓋骨に小さな穴を開け、そこから脳室に管を刺すV-Pシャント術は、術後二時間もすれば歩け、その日のうちに歩き方が改善する例もたくさんあるという。

 脊髄の腰のあたりから腹腔内へ排出させるL-Pシャント術もある。

「手術を受ける側としては、こちらの方が気持ち的にも選択しやすい面がある。ただ、腰が曲がって腰椎が変形している高齢者などは選択できないこともある。また、脳脊髄液を排出させる細い管がすり切れ、再手術が必要になるケースも出てくる。70歳以上に再手術をするリスクを考えると、やはり確実なV-Pシャント術を薦めています」(石川氏)

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 慢性硬膜下血腫も、気づきにくい「治る認知症」だ。山王病院・山王メディカルセンター脳血管センター長で国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授の内山真一郎氏が解説する。

「頭をぶつけるなどの外傷により、硬膜とくも膜の間に血液が溜まってしまう疾患ですが、高齢者に多いのが特徴です。

 アルツハイマー型認知症でなくても、加齢に伴って脳は少しずつ萎縮し、頭蓋骨と脳の間の距離が広がっていきます。頭蓋骨と脳の表面は架橋静脈という血管で繫がっていますが、その静脈が伸びた状態になる。そこに衝撃が加わることで、簡単に切れてしまう。

 厄介なことに、激しい転倒や頭部への衝撃でなくても、ちょっとよろけて柱や壁に頭をぶつけただけでも、発症してしまいます」

 アルコールを多飲する人は脳の萎縮が進んでいるケースが多く、慢性硬膜下血腫になりやすいという。