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6種類以上の多剤併用は注意

 意外なことで認知症に似た症状が出ることもある。

 脈拍数が落ちてしまう徐脈もその一つ。認知症は基本的には急激に進行することはない。ところが、この数日で急にボケてきたとか、朝起きてきたら何かおかしい、返事も曖昧になっている、というケースがある。

 そのような時は、まずは脈拍と体温を測ること、と話すのは前出の長谷川氏。

「70歳以上の1分間の脈拍数は通常は60から100くらいです。ところが、徐脈になり脈拍数が50、40まで落ちると、意識障害が出てしまいます。全身へ酸素を運ぶ血流量が落ち、脳への血流量も落ちてしまうからです。こうした場合は、不整脈や、脳塞栓の原因にもなる心房細動を疑う必要があります。心房細動は脈が早くなったり遅くなったりと不規則になり、血流が3分の2に落ちてしまうといわれています。

 薬で脈のコントロールをしたり、場合によってはペースメーカーを入れる必要がありますが、それによって認知機能は回復します」

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 発熱も気がつきにくい認知機能低下の原因だ。高齢者は、気温や体温の感じ方が鈍くなっている。夏場なのに厚着することで服の中に熱がこもり、体温が上がって微熱状態になる。発熱によって脱水症状に陥り、意識障害が出ることがあるという。

 薬剤性による症状も大きな問題だ。ポリファーマシー(多剤併用)が症状を引き起こすことがあるのだ。

 認知症の在宅医療を中心にする、たかせクリニックの髙瀬義昌理事長がいう。

「6種類以上の薬を同時に飲んでいると、さまざまな弊害が出てくるという研究結果があります。認知機能低下もその弊害の一つ。

 薬の種類によっても認知症に似た症状を引き起こすものがあります。代表格は、ベンゾジアゼピン系と呼ばれる抗不安薬です。睡眠薬代わりに処方されている方も多いですが、できれば他の薬に変えた方がいいと思います。薬を減らす外来を行う病医院もでき始めています。一度、飲んでいる薬を見直すことも大切だと思います」