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運動習慣と知的好奇心

 前出の朝田氏がこう話す。

「今回の長寿医療研究センターの研究で出た46%は『ちょっと多いかな』というのが正直な印象です。その原因として考えられるのは、まずはうつ病です。これを誤ってMCIと診断してしまうケースは多い。また、睡眠不足や体調不良といったコンディションの問題で認知機能が落ち、検査の点数が低かったというケースもあります。ただ、数字よりももっと大切なことがあります。それは、『戻れる人は必ずいる』ということです」

 認知症予備軍と言われれば、ただただ不安になり、本人も周囲も辛い思いをすることになる。だが努力次第では正常まで回復できるのだ。

 では、戻るためには、いったいどうすればいいのか。

「大きく言えば2つです。まずは運動習慣、特に有酸素運動を行うこと。もうひとつは強い知的好奇心を持って、積極的にコミュニケーションをはかることです。ただ慣れていること、よく知っていることを繰り返し学んでも意味がありません。あくまで、未知の分野に興味を持ち続けることが重要です」(同前)

 桐島順子さん(仮名・80)は、5年前に夫が他界。うつ傾向が強くなり、認知機能に問題が出てきた。

「とにかく悲しくて、いつ死んでもいい、いっそ早く死にたいとまで思っていました。家にずっと閉じこもり、泣いてばかりいたんです」(桐島さん)

 心配した長女が一緒に生活をするようになった。すると桐島さんの言動がおかしくなっていることに気づいたという。何度も同じことを繰り返したり、もう何年も前のことを、さっき起こったかのように話し始めた。さらに、お金の使い方も変わった。貴金属や高級化粧品を際限なく買うようになってしまったのだ。

©iStock.com

 その様子に驚いた長女に連れられてメモリークリニックお茶の水を受診した。

「最初の検査では、先生から『記憶力が同世代の人に比べて3分の2から半分程度しかない。これが3カ月もすれば半分になり、やがて認知症になりますよ』と宣告されました。

 最初は、どうなってもいいなんて思っていましたが、それでもデイケアに通っていると少しずつ前向きな気持ちになり、あんなに億劫に感じていた人付き合いも、だんだん楽しくなってきたのです。

 私はいま自分で『戻ってこられた!』と感じています。本山式筋トレをしていると、本当に脳の細胞があらたに芽生える感じがするんです。

 みなさんにお伝えしたいのは、同じ立場の仲間が大切だということ。ただ筋トレをやるだけなら、自宅でもできる。でもそれではダメなんです。同じ境遇の仲間と話したり、時には競争したり悩みを話したり。そういうコミュニケーションも大切な時間です。いまでは外へ出て、人に会い話すことが生きがいです。ちょっとおせっかいなくらいに人に話しかけています(笑)」(同前)

 いまでは認知機能テストも老年期うつ病評価尺度もすっかり正常値だという。

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 続きは『最新予防から発症後の対応まで 認知症 全部わかる!』に収録されています。

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