夏の風物詩として親しまれている“セミ”。長い梅雨が明けた8月、東京都杉並区内の某公園に貼られたポスターが注目を集めた。ポスターには「区内の公園で食用その他の目的でセミ等を大量捕獲するのはおやめください」と書かれており「セミを食べるってこと? 大量ってどれくらい?」と、首をかしげる人々が続出し、物議を醸した。(取材・文=真島加代/清談社)

「大量のセミが乱獲されている」という旨の苦情が

 9月9日現在も貼られている、このセミの乱獲防止ポスター。掲示された経緯について杉並区都市整備部みどり公園課の職員に話を聞いた。

杉並区内の複数の公園に貼られているポスター。 ©️清談社

――ポスターを掲示したのはいつ頃ですか?

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杉並区担当者「8月の上旬です。8月に入ってから「大量のセミが乱獲されている」という旨の苦情をいただくようになりました。ひとつの公園ではなく、特定の地域にある公園でセミの乱獲が起きているようです。セミの乱獲に関するお問い合わせをいただいたのは初めてで、メディアのみなさんからのお問い合わせも多く、反響の大きさに驚いています」

――ポスターには「食用」と書かれていますが、その場で食べている人がいるのでしょうか?

杉並区担当者「住民対応の一環なので詳しいことは申し上げられないのですが、ポスターの内容からお察しいただければと……。本来であれば、区の職員が事実確認をしたうえで対応するのですが、乱獲が起きている時間帯の問題もありまして、確認には至りませんでした。ただ、情報は繰り返しいただくので、やむを得ずポスターを掲示しました」

――今回で「セミを食べちゃダメなんだ」と感じた人もいると思うのですが、問題点は“食用の目的”にあるのでしょうか?

杉並区担当者「食べるのがダメというよりは、公園の動植物の乱獲は杉並区の条例に抵触する可能性が高いです」

 <杉並区立公園条例 第14条>

(行為の制限)

 都市公園内では、次の行為をしてはならない。ただし、第1号から第7号までについては、あらかじめ区長の許可を受けた場合は、この限りでない。

(2) 植物を採集し又は損傷すること。

(3) 鳥獣魚貝の類を捕獲し又は殺傷すること。

「公園内の虫も“動植物”と捉えると、植物も含めてみだりに捕獲するのは条例違反になるかもしれません。ただ、この条例に違反した人全員が逮捕されるわけではなく、今回は確認できませんでしたが、違反している人を見つけ次第、まず口頭で注意をします。本当に悪質な状況や事件性が伴う場合は、警察に相談するケースもありますね」

セミの幼虫が地上に出てくる際にあく穴。 ©️清談社

――ちなみに、ポスターの効果は表れていますか?

杉並区担当者「お問い合わせがなくなれば『効果があった』とお伝えできるのですが、継続して掲示しているということでお察しいただけると幸いです」

 セミを乱獲して食べても逮捕されるわけではないが、節度を保った対応が望まれるようだ。