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たった一匹で最期を迎える犬や猫たち……高齢者が飼いきれずに「ペットが路頭に迷う」悲しい現実

たった一匹で最期を迎える犬や猫たち……高齢者が飼いきれずに「ペットが路頭に迷う」悲しい現実

捨てたんじゃなくて「置いた」

2020/09/24
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 とても良い息子さんで、マツコのことを知り『必要なお金は出す。重度の猫アレルギーで大阪には行けないが、母の猫をよろしくお願いします』と、お金も振り込んでくれました。毎週、お見舞いにも来ていると聞いています」(ボランティア・辻本麻佐子さん、以下同)

マツコちゃんは猫エイズを患っている。未発症なので元気だが、里親はみつかりにくい

 このようにギリギリになっても誰にも相談できず、周りが見かねて相談してくるケースは多いと言います。

「飼い主が体力的にも経済的にもぎりぎりのところまで追い詰められていて、『今月いっぱいで賃貸住宅を引き払わないといけない、ペットをどうしよう』と慌てて相談されるケースは多いです。一度入院したり、施設に入ったりすると二度と戻って来られないし、部屋もすぐに解約しなければいけないので、どうしても自分のことで精いっぱいになってしまうんですよね。そうなると、飼い主本人からの相談は珍しく、ケアマネさんや遺族が代わりに相談することになります」

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 また、飼い主だけでなく、猫も高齢な場合が多く、里親を募集してもなかなか希望者は現れない問題もあります。

ハッピータビーで暮らすマスターくん。飼い主夫婦が高齢のため施設に入所し、飼育放棄された

飼い主に代わって終生飼育する「アニマルセイブシステム」

 こうした事態に備えるために公益財団法人日本アニマルトラスト・ハッピーハウス(以下、ハッピーハウス)では、「アニマルセイブシステム」を運用しています。飼い主に万が一のことが起こった時にペットを引き受けるサービスです。代表の甲斐尚子さんはまさに「飼い主がご高齢になったり、重大な理由で動物の面倒が見れなくなった時、動物の命を守るようにこのシステムを始めた」と言います。

「30年前は、『安楽死なくして、動物愛護活動はできない』という考え方が主流でしたし、これまでたくさんの動物たちが殺処分されてきました。でも私は、愛護活動こそ命を守る活動をするべきだと思うんです。

ハッピーハウス代表の甲斐尚子さん。動物に向き合う視線は、いつも優しい

 犬の場合、『子犬が産まれたけれどそんなに多く飼えない』や、『飼い始めたけど言うことをきかない』もしくは『飼い主が高齢で飼えなくなった』という理由で保健所に連れてこられることが多い。そこで、まず高齢者とペットの問題を解決できないかと、アニマルセイブシステムを作りました」

 こうして誕生したアニマルセイブシステムですが、飼い主が元気なうちに契約してもらうことを前提にしているため、契約者は高齢者に限りません。万が一、何らかの事情で飼い主がペットを飼育できなくなった時、飼い主に代わって私たちが終生飼育するという契約です。