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たった一匹で最期を迎える犬や猫たち……高齢者が飼いきれずに「ペットが路頭に迷う」悲しい現実

たった一匹で最期を迎える犬や猫たち……高齢者が飼いきれずに「ペットが路頭に迷う」悲しい現実

捨てたんじゃなくて「置いた」

2020/09/24
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「飼い主がペットより早く死亡したり、施設に入所しても、この契約さえしておけば残されたペットが行き場を失うことはありません。自分の死後のペットの行く末を心配する多くの人にとって、アニマルセイブシステムは精神的保険にもなり得るのです」(ハッピーハウス・甲斐尚子さん、以下同)

アニマルセイブシステムを利用して預けられた猫。まだまだ元気!

 当初、アニマルセイブシステムはハッピーハウスと飼い主との二者間での契約でした。しかし、本人が亡くなってから契約の存在を知らなかった遺族が、資産だけ相続して、ペットを保健所に持ち込んだり遺棄してしまうことが多くあったため、仕組みを見直しています。

「本人に万が一のことがあった時、必ず私たちに連絡してくれる人や銀行などの機関を交えた三者間契約を結ぶことにしたのです。それ以来、ペットがどこに行ってしまったのか分からないということはなくなりました」

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 大切なペットの先行きを案じることなく利用できるアニマルセイブシステム。飼い主が亡くなった後に、ペットを育ててくれる制度はありがたいですが、その費用が気にかかるところです。

「ハッピーハウスにはペットホテルもありますが、猫は1泊1,500円、犬は1泊2,500円で預かっています。単純に1年単位で計算してみても、スタッフの人件費など諸経費を含めて、犬は100万円、猫は60万円かかります。しかし、アニマルセイブシステムでは、犬は80万円、猫は40万円で引き受けています。しかも追加費用はいただきません。また、飼い主にもそれぞれの事情があると思うので、何がなんでもこの金額でというのではなく、ペットの命を助けるために折り合いをつけることもあります」

ハッピーハウスには獣医師がいて、適切な医療を受けられる

預けたはずのペットがいない……。高齢者を狙う「詐欺」

 こうして高齢者とそのペットが抱える問題に取り組みを続けている人がいる一方で、飼い主の足元につけこむ詐欺も増えてきています。

「何十万も支払って飼えなくなった猫を預けた人がいます。数日後、『自分で飼えるようになったので猫を返してください』と言いに行ったのですが、そこに猫はもういなかったのです。こういう場合、たいてい『里親が決まった』と言われて、飼い猫もお金も戻ってきません。保健所に連れて行かれても証拠をつかみにくいため、詐欺事件としての立件も困難なのです。ペットを託す時は、実際にペットが暮すことになる場所を自分の目で確認し、スタッフと話をして聞きたいことは全て尋ね、これだ! と思うところに預けることが大事です」

 アニマルセイブシステム以外にも後見人制度などを用意している団体もありますが、万が一のことがあった時にペットがどこでどのように暮らすのか、医療は受けられるのかなど、納得できるまで確認する必要がありそうです。