昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載春日太一の木曜邦画劇場

ハリウッド映画にはない空母の中の人間ドラマ!――春日太一の木曜邦画劇場

『ハワイ・ミッドウエイ大海空戦 太平洋の嵐』

2020/09/22
1960年作品(118分)/東宝/2500円(税抜)/レンタルあり

 ハリウッド映画『ミッドウェイ』が公開された。

 これはタイトルの通り、太平洋戦争の重大な転機となったミッドウェイ海戦を扱った作品。ニミッツ、ハルゼーの両提督のキャラクター性や新しいアプローチの山本五十六、CGを駆使した海戦シーンなど、見どころは多い。が、そこはハリウッド映画。日米両陣営の模様が描かれているが、やはり日本側の描写はどうしても薄くなっていた。

 そこで、今回はミッドウェイでの日本側の様子をたっぷりと描いた作品を取り上げる。それが『ハワイ・ミッドウエイ大海空戦 太平洋の嵐』だ。

 真珠湾攻撃に始まり、ミッドウェイの敗北に終わるという、日本の戦争映画ではよくある構成だが、大局的な視点からではなく最前線で戦う空母「飛龍」にスポットを当てているため、戦闘アクション色の強い作品になっている。

 そして、見せ場のことごとくが『ミッドウェイ』で描き切れていない部分だった。

 たとえば、「再装填」。

 ミッドウェイ島の米軍航空基地を空襲した連合艦隊だったが、どこからともなく現れた米戦闘機隊の攻撃を受ける。

 これは基地から出撃したのか、空母から出たのか。基地からなら、戦闘機は爆弾を装備してこれを叩く。空母からなら魚雷を装備する。艦隊司令部は近くに敵艦隊はいないと判断、爆弾を装備させる。

 が、偵察機が大艦隊を発見。急きょ、魚雷を装填し直すことに。大急ぎで作業を進めるも、魚雷は重く、戦闘機は多い。そんな中、米の戦闘機隊が迫る――。海戦の帰趨を決することになる、この再装填の模様が本作では克明に描かれ、その緊迫感は『ミッドウェイ』を遥かに上回る。

 終盤の飛龍の描写も、しかり。再装填に手間取ったため、連合艦隊の戦闘機は壊滅的になり、各艦とも戦闘不能に陥る。そうした中で飛龍は戦い続けた。そして、友永大尉(本作では友成)率いる精鋭の戦闘機隊が最後の出撃へ向かう。

 その描き方が、決定的に異なるのだ。『ミッドウェイ』では、その他大勢的な面々が無機的に飛び立っていた。が、本作では三船敏郎の演じる山口司令官が鶴田浩二の演じる友永を見送る。両スターのたっぷりとした芝居は、観ていて「負ける気がしない」と錯覚すら覚えるド迫力だった。

 加えて、沈みゆく飛龍を描く円谷英二による特撮の悲壮美、生き残った者を待ち受ける理不尽なその後の顛末と、無力な諦観に包まれるラスト。

 アクションとしても、人間ドラマとしても完璧な作品だ。

 この機会にぜひ日米の両作を合わせてご覧いただき、双方の視点からのミッドウェイ海戦に触れていただきたい。

日本の戦争映画 (文春新書 1272)

春日 太一

文藝春秋

2020年7月20日 発売

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー