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「しゃべくりに障がい者は出てない」28歳・猪狩ともか、“車椅子アイドル”への葛藤

仮面女子・猪狩ともかさんインタビュー #2

2020/10/04
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アイドルって必ず卒業がやってくるじゃないですか

――尊敬できるメンバーにも支えられ、猪狩さんにとってかけがえのない存在である仮面女子ですが、今年卒業し、タレントという新たな道に進まれます。卒業はどういった心境で決意されましたか?

猪狩 アイドルって必ず卒業がやってくるじゃないですか。年齢的なこともあるし。「じゃあ私にとって卒業の時期っていつなんだろう」と考え出したのは去年の8月頃でした。ちょうど仮面女子のワンマンライブ(当初は今年9月19日に予定。コロナ禍の影響で12月12日に延期)とパラリンピックがほぼ同時期だったんですね。

 大きなワンマンライブもあるし、事故後に関わるようになったパラスポーツのお仕事もパラリンピックを終えたら一区切りかな、というふうに考えて去年の12月に卒業を決心しました。

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――卒業に際して、メイドカフェを卒業した時にファンが離れてしまったこと(1回目参照)を思って不安を抱くことはありますか?

猪狩 ちょっとよぎったりはするんですよ。あの時みたいになるんじゃないかって。でも今応援していただいてる方達は、アイドルじゃない普通のトークイベントにも来て下さったりするんです。「1人の人間として猪狩ともかを好きだから、卒業してからも応援するね」って言ってくださる皆さんがいるので「そこはちょっと信じてもいいかな」と思ってますね。

「車椅子アイドル」っていう言い方は分かりやすいけど

――仮面女子における猪狩さんと、個人としての猪狩さんとで、違いはありますか?

猪狩 やっぱり個人の時は障害や事故に関する意見を求められることが多いし、そこは「歌って踊る猪狩ともか」ではなく「意見を言う猪狩ともか」を求められていると思うので、「しっかり自分の伝えたいことを、障害者目線の発言を口にしないとな」と思っています。

 

――それとは別に、プライベートの猪狩さんはまた全然別の方という感じですか?

猪狩 いや、そんなことないと思いますよ。基本はこのまんまなんですけど。ちょっとゲームしてると口が悪いぐらいですかね(笑)。

――障害に関することでいえば、自身を「『車椅子アイドル』と呼ばないでほしい」とおっしゃっていました。それは何故でしょう?

猪狩 「車椅子アイドル」っていう言い方は一番分かりやすいとは思うんですけど、「私、車椅子ですよ」ってすごく言ってるわけじゃないんです。元々普通に活動していて、そんな中でたまたま車椅子生活になったわけであって。

「車椅子アイドル」という言われ方をしちゃうと、車椅子を取ったら何もない人みたいになっちゃう気がして。そこが「ちょっと嫌だな」と感じているのかな、と思います。