1ページ目から読む
4/5ページ目

 アメリカのガイドラインはさらに慎重で、痛風になったことがない人はもちろん、1回だけ痛みの発作が出た人や、数年ごとに発作が出ている人でさえ、基本的には薬を始めるべきではないと言っている。痛風になった人が薬を飲んで再発が減るか試したという研究があるのだが、1年以内の痛風の再発が減ったというデータは出ていないからだ。ではどんな人が薬を飲むべきかというと、1年以内に2回の痛風を繰り返すとか、ほかの要素も加わってようやく、患者と医師がよく相談して決めるべしとしている。

 だから、痛風になったことのない人は、「尿酸値が高いですね、薬を始めましょう」と言われたら、「でも私は痛風になったことがありません」と言ってもいい。たいていの医者はそういう場合に薬が効かないことを知っている。渋い顔をされたら「添付文書にも痛風予防とは書いてないし日本のガイドラインもアメリカのガイドラインも痛風予防のために薬は勧めてないですよね」と言ってもいい。

「ゼロではなく100%でもないリスクに対して適切にふるまう」という問題

 さて、どうしてそこまでして尿酸の薬を拒否しないといけないのだろうか。振り返っておこう。

ADVERTISEMENT

 薬を飲むのは面倒だし、お金もかかる。しかも尿酸の薬は予防が建前だから、何も起こらないかぎりずっと飲み続けることになる。死ぬまでか、医療費を払えなくなるまでか、ほかの病気で痛風どころではなくなるまでか、いずれにせよ、ずっとだ。

©iStock.com

 それから薬の副作用も考えておこう。

 副作用の話をするのはとても難しい。軽い副作用や対策できる副作用であっても、副作用があると思うと「そんな不気味な薬は飲みたくない」と感じてしまうものだ。

 だから筆者がもし「尿酸の薬を嫌いにさせよう」と考えるなら、副作用の恐ろしさを強調して書くのはとても簡単だ。

 だがそうはしない。「薬で痛風を防げる」という迷信を捨てた代わりに「薬は怖い」という迷信を覚えても、自由にはなれない。迷信を捨てて自由に生きるためには、ゼロではなく100%でもないリスクに対して適切にふるまうというやっかいな問題を避けては通れない。だからここでも副作用の話はできるだけ一方的にならないように書く。週刊誌か何かでよくある「薬は怖い」という話に比べるとはるかに面倒でわかりにくい話になってしまうが、しばらく付き合ってほしい。

 尿酸値を下げる薬には、ザイロリック(一般名:アロプリノール)、フェブリク(フェブキソスタット)、ウリアデックまたはトピロリック(どちらもトピロキソスタット)、ユリノーム(ベンズブロマロン)、ベネシッド(プロベネシド)、ユリス(ドチヌラド)がある。