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まれで致命的な副作用をどう考えるか

 利益があれば、多少の副作用があっても無視できるかもしれない。逆に言って、利益がなければ、わずかな副作用も許されない。痛風がない人にとって尿酸の薬は、効く証拠がない。つまり、効くかどうかわからない。だからこそ、表1に挙げるようなまれな副作用を無視しにくい。

 

 まとめると、尿酸値を下げる薬で初発の痛風を防げるという証拠はなく、薬によっては死亡のリスクを疑われている。比較的安全な薬でも軽い副作用のリスクとか費用とか飲み続ける面倒さはついて回る。

 まれで致命的な副作用をどう考えるかは難しい。

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 たとえば、自動車を運転すると事故で死ぬかもしれないが、それでも便利さを取って運転している人は多い。飛行機に乗れば落ちるかもしれないし、飲食店で出てきたものは食中毒を起こすかもしれないし、あなたのパートナーはHIVに感染したことを隠しているかもしれない。

 こういうリスクにとらわれていると何もできなくなる。明らかな理由があれば、小さいリスクは無視するのが普通の判断だ。

痛風は転げ回るほど痛いが、痛風になる前の薬は効く証拠がない

 では尿酸の薬の副作用は無視できる程度のリスクだろうか? そうかもしれない。痛風は痛い。転げ回るほど痛い。仕事や家事どころではなくなる。しかも繰り返す。だから筆者も、痛風になったあとの治療までは否定しない。

©iStock.com

 しかし痛風になる前の薬は効く証拠がない。リスクがあることはわかっているが、利益は不明なのだ。幸運のおまじないをすると1億回に1回の割合で10万円なくすとしたら、やってみようと思うだろうか。

 痛風をめぐる迷信は根が深い。ビールから始まって、食べものにも、薬にも話は広がる。大本になっているのは、「初発の痛風を予防できる」という迷信だ。迷信でもいいから薬を飲みたいと思うならそれも自由だ。だが、迷信だから従わないと考えるのも自由だ。

 迷信のために、肉や魚や酒、特にビール、それも好きな銘柄のビールを、プリン体の量がほかの銘柄より多いという理由で、あきらめることはない。

「健康」から生活をまもる 最新医学と12の迷信

大脇幸志郎

生活の医療

2020年6月11日 発売