痛風になっても後悔しないと納得したうえで、ビールを飲む自由はあるはずだ
さらに、プリン体は食べなくても、もともと体内で作られている。その量は食べものから入ってくる量より数倍多い。つまり、食べもの由来のプリン体は体内のプリン体のごく一部でしかなく、ビールのプリン体はそのまた誤差ほどでしかない。
ところが栄養学はプリン体を計算するだけでは許してくれない。問題はプリン体ではなく尿酸だと言ってくる。プリン体の話はなんだったのかと思ってしまうが、まあいい、プリン体は忘れよう。尿酸だと何が問題なのか。アルコールだ。アルコールは尿酸を体にためこむ作用がある。だから酒を飲むと尿酸は増えてしまう。どんな酒でも。だから、ビールでも。やっぱりビールは痛風になるのだ、ビールを飲むな、ほかの酒も飲むな、と言われてしまう。
酒好きな私たちはどう言い返せばいいのだろう。
まず言えるのは、世の中に酒好きがこれほどいても、痛風になる人はごく一部だということだ。飲んだせいで痛風になった人はどこかにいるのかもしれない。しかし、飲んでも痛風にならない人のほうがはるかに多い。
冬場に生ガキを食べてノロウイルスにやられる人は毎年いる。しかも、めちゃくちゃ多い。それでも生ガキは禁止されていない。
同じように、万一痛風になっても後悔しないと納得したうえで、ビールを飲む自由はあるはずだ。飲んでもどうせ痛風になる確率は低いのだ。しかも、痛風になっても別に他人に迷惑はかけない。生ガキでノロウイルスをもらった人は下痢や嘔吐によって大量のウイルスを他人に広めることになるし、ノロウイルスの感染力はめちゃくちゃ強いが、痛風はうつる病気ではない。
自己責任論はそれなりに説得力がある。
栄養学もさすがに、地上の誰にも酒は許さないとまでは言わない(いや、最近は様子が違ってきているのだが、その話は後回しにしよう)。
禁酒をすると痛風が減るという証拠はない
だが油断してはいけない。世の中には尿酸の血液検査というものがある。健康診断か何かで尿酸を測られる。「尿酸値が高いですね、お酒は控えたほうがいいでしょう」と言われてしまう。検査をして現の証拠をつかまれたとなると、言い訳は苦しく思えてしまい、「わかりました」と答えてしまうかもしれない。
検査結果を突きつけられてもまだあきらめるのは早い。
血液検査など占いのようなものだ。数字で出るから客観的だということはない。確かに酒を飲むと尿酸値は上がる。しかし大事なのは痛風だ。実は禁酒をすると痛風が減るという証拠はない。ついでに言うと、食べものを変えても痛風が減るという証拠はない。だから、尿酸値が高いからといって酒をやめる必要はない。