文春オンライン

なぜ韓国の若者が日本企業で採用されるのか 日本就職を決めた彼らのホンネ

『韓国の若者』より

2020/09/27
note

就活では日本企業25社に出願

 就職先として韓国ではなく、日本を選んだ最も大きな理由は、日本企業の人材育成制度にあるという。即戦力を求める韓国よりも、お金をかけて人を育てる日本企業の気風に惹かれた。

 就活では日本企業25社に出願し、内定をもらえたのは某大手フランチャイズ学習塾と、ホテルだった。学習塾での業務内容は主に全国の講師のマネジメントで、ホテルは接客業務が中心だったとのこと。

「ただ、学習塾からは『正直、君が望むようなスキルは身につかないと思う』と言われました。また将来家業を継ぐことを視野に入れると、ホテル業はあまり関係のない分野でした」

ADVERTISEMENT

 そんな中、企業説明会・採用選考会等を学内で行うオンキャンパス・リクルーティングに来ていたのが現在の銀行だった。求人リストに、彼の大学が入っていたのだ。

 面接から約一か月後、電話で内定の知らせをもらった。

「日本で最大手の銀行なので、まさか自分が受かるなんて信じられませんでした」。日本人でも入るのが難しいに違いない会社に採用された決め手は、「自分でも良く分からないが、韓国人ならではの経験が『自己分析』に生きたのかも」と振り返る。

©︎iStock.com

採用の決め手は「兵役経験」

 リュさんは大学を休学して約2年間、兵役に就いている。面接での自己PRではそのときの経験を話したそうだ。

 軍隊では情報兵(諜報兵)を任命されたリュさんだったが、機密文書の保管が杜撰で、搬出された文書が戻ってこないという事態が頻発していた。そこでリュさんは文書管理簿を作り、持ち出された文書が確実に返却されるシステムを構築した。その経験をアピールしたことから、問題解決能力やリテラシーが評価されたと推測される。

 そもそも韓国の銀行は経営学科出身者にしか門戸を開いていないうえ、上位大学のエリートでも入社が難しい狭き門とされている。国境を越えた人材流通では、それぞれの国のローカルな常識が覆されがち、という典型的な事例だ。