日本企業は韓国の若者のどこを好む?
文部科学省の発表によれば、2019年3月大学卒業予定者の就職率は97.6%、短大は98.6%。つまり日本の大学生は、卒業後の就職についてはとりあえず保証されている、というイメージに近い。一方で、卒業後の就職が保証されていないイメージの強い韓国の大学生は、就職率を少しでも上げるために分野を絞り、能力を高める。要するに、コスト意識と緊張感が日本の学生とはかなり違うということだ。
筆者からすれば、総合職制度はむしろそんな韓国人学生を救うものなのでは、と感じてしまう。しかし実際には適応できず、辞めてしまう韓国人の若者も少なくないようだ。
面接対策としてヨさんは、日本就活コミュニティで得た情報をもとに想定質問集を作り、シミュレーションを繰り返した。そこで意識したのは、日本企業が求める人材像だった。
「日本の企業から好まれる韓国人の強みは、チャレンジ精神や積極性だと思ったので、そこを押し出すようにしました」
特に大手電工会社の最終面接まで行けたのは、そのおかげだったと語る。採用された会社の面接での自己PRでは、韓国でのアルバイト経験を話題とした。
「日本人の観光客に話しかけ、韓国の観光アプリを勧めるというバイトでしたが、そこで日本人だけでなく、中国人や欧米人にもアプローチして実績を上げたことをアピールしました。断られないような話しかけ方を分析し、それを実践した経験も添えました。また日本人は海外駐在に消極的で、特に中国や東南アジアへの赴任を嫌がると聞いたので、私はむしろ行って新規開拓をしたいとアピールしました」
それが奏功したか定かではない。ただ内定後、担当者に採用理由を聞くと、特に語学力を評価されたと告げられた。「TOEICでの800点超えは日本では珍しいことに加え、中国語力も評価されたとのことでした。TOEICで900点を取っていても、韓国の就活では意味をなしません。それだけに、日本で評価されて良かったと思います」
コロナ禍が去り無事入社できれば、日本でなるべく長く勤めたいとヨさんは言う。「だからこそ、就職して終わりではなくいつでも転職できるようにしなければと思います」。