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なぜ韓国の若者が日本企業で採用されるのか 日本就職を決めた彼らのホンネ

『韓国の若者』より

2020/09/27

日本は韓国よりも市場が大きい

「外国語でコミュニケーションしながら働くことで、視野が広げられると思っていたからです。3、4年前ほど前に『日本は売り手市場のため、仕事を探しやすい。日本語が話せる人は日本で働くことも考えてみるべき』というニュースがあったのを覚えていました。日本は韓国よりも市場が大きいし、有名なグローバル企業の支社がいくつもあるのも利点です。万が一、希望するような有名企業に就職できなかったとしても、サービス業などの人材不足が叫ばれている業界になら入れるのではないかと。とりあえずそこで日本語と日本文化に慣れながら、転職をすることを考えました。親も、韓国は年功序列が激しいので、日本で就職したほうが良いのでは、と言ってくれました」

 そのようにして日本への就活を2018年7月より開始した。情報源として頼ったのは、日本就職を斡旋する民間企業KORECが主催する就職イベントや、NAVERやSNSなどインターネット上にある日本就活コミュニティだ。具体的な企業研究は、KOTRA(大韓貿易投資振興公社)のホームページを活用したという。

「うちは経済的に余裕がなく、日韓を頻繁に行き来しての就活はできなかったので、韓国で開かれた就活フェアにすべて参加し、それで50社ほどエントリーしました。そのうち内定をもらえたのは航空券予約サイトを手がけるIT企業と一部上場のソフトウェア会社、農産物の専門商社とあと一社。大手の電工会社は日本での最終面接まで行ったのですが、採用には至りませんでした」

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©︎iStock.com

総合職制度にカルチャーショック

 日本への就活をする中でいくつかカルチャーショックを受けたそうだが、特に日本企業が、新卒に高いスキルを求めていないという点に驚いたそうだ。

「でも正直、大学生はどこまでも学生なので、新卒から即戦力となることを期待する韓国企業よりも、日本企業の姿勢のほうが望ましいと思います。あとは、体育会系が重宝されること(笑)。韓国にも体育会系の序列文化はあるのですが、体力がある分、長く勤めてくれるから、といったことを日本人から聞いて、そんなまさかと思いました」

 また、韓国にはない総合職制度にもとまどいを覚えたという。

「職務内容が事前に分からないうえ、働いてみるまで適性の有無が分からない、というのでは効率的ではないし改善してほしい。自分がやりたいことが決まっていて、それに沿った業務があればいいと思うのですが」

 取材を通じて感じたことだが、これは韓国の就活生に多くみられる考え方である。日本では大学の専攻と実際の職務内容が一致しないことがよくある。しかし韓国の学生は、そこで生じるある面での効率の悪さが耐え難いようだ。ヨさんも次のように言う。

「大学入学当初から就職への不安と焦燥感があるため、韓国の学生は4年間の計画をきっちり立てます。少しでも就職の可能性を高めるために複数専攻するのは当たり前。私の場合は、中国語だけでは足りないと感じたので、経営学の学位も同時に取りました。それでも焦燥感は拭えませんでした」