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陸上で水中の演技を練習する日々

 アーティスティックスイミング代表で井村雅代コーチの指導を受け、代表の座を勝ちとった大学生と大学職員を訪ねた。

 法政大スポーツ健康学部4年の柳澤明希はこう話す。

「少し動揺がありました。今は個人の技術を磨き上げ、そして演技の完成度を高める時間をいただけたと思っています。井村先生から、『一年後もこの8人でいこう。それが一番強いチームになるはず。私はそう信じている。あなたたちも受けて立ちなさい』という言葉をいただきました。この時、私はオリンピック代表という自覚と覚悟を改めて持ちました」

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 練習拠点であるプールが使用できなくなり、泳げない日々が続いた。が、陸上で逆立ちして息を止め音楽に合わせて足技を行うなど、練習ではさまざまな工夫を凝らした。

 全体練習ができない中、オンライントレーニング、離れているメンバーと練習の動画を共有して、コミュニケーションをとっている。

「技術面で劣っていること、注意されたことをノートに書きとめ、吸収し、地道に練習を積んでいます。長身の外国人選手に負けない体を作るため、筋力トレーニングはもちろん、痩せやすいタイプの私は合宿中、一日5500キロカロリー以上の食事を摂っています」

©iStock.com

 近畿大職員の福村寿華は大会延期の報を受け取った時、チームメートと一緒だった。

「東京大会に向けて突っ走り続けていたので、この気持ちをどうすればいいのかと、思い悩みました。井村先生から『延期になったけれど、どうしたいか』と聞かれ、私は『オリンピックに出てメダルを獲りたいからこのまま続けたい』と答えました。もし延期の発表の時に一人だったら、こんなにすぐに切り替えて、続けて頑張ろうとは思えなかったでしょう」

 コロナ禍の影響で約一カ月半、チームに必要な水深と広さのあるプール環境が整わず、満足のいく練習ができなかったが、福村は延期を前向きに捉えている。

「自分自身についても今まで見えていなかったものが見え、競技と向き合う時間を作ることができ、新たな技術に挑戦しています。延期でオリンピックまでの時間が与えられました。それが良い方向にも、または悪い方向に進むのも、何も変わらないのも、すべて自分の時間の使い方次第です。試合で一番素晴らしい演技ができるように一日一日を大切にすごすと同時に、自分を支えてくださる方々に感謝しています」