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2020/10/08

体育の授業は座学ばかり

 射撃競技で代表に選ばれた平田しおりは、明治大政治経済学部3年だ。

「7月末の大会に向けて残り4カ月、気合を入れ直し、練習に励もうと思っていた時に延期が決まり、出場権や今後の成績がどうなってしまうのかがわからず、これからどうしたらいいのか途方に暮れ、しばらくは抜け殻のようになっていました。でも、すぐに『中止』ではなく『延期』であり、オリンピックがなくなったわけではないと受け止め、来年に向けて自分ができることをやろうと思い直しました」

 しかし、どの射撃場も休館が続く。平田は不安を抱きながら、練習で積み上げたものを少しでも維持しようとランニングや筋トレなどに力を入れた。緊急事態宣言の解除で射撃場が使えるようになった。これまで積み重ねてきた技術や体力を落とさないよう、厳しい練習を課している。各姿勢の感覚を確認してバランスをとったり、重心の位置などを意識したり、動作一つひとつの確認に余念がない。

 高飛び込み代表の武庫川女子大健康・スポーツ科学部2年、荒井祭里は冷静だった。

「おそらく延期になるだろうと思い、心構えはしていました。20年大会に向けて楽しみと緊張感で胸がいっぱいでしたが、もう一度、気持ちを入れ直して頑張ることができる、一年あればもっと練習できて技術を磨けると、前向きに考えるようになりました。延期で精神的に大変だったということはなかったです」

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 しかし、モチベーションを保ち続けるのは難しいようだ。今年は高飛び込みの試合がほとんど行われない。そのため、試合形式の練習を多く行っている。特に力を入れているのは、飛び出しから入水するまでに披露する抱え型など「型」の練習だ。それを陸上で入念にチェックしている。また、体作りに余念がない。

「私はケガが少なく丈夫なほうです。それでも体重が増えたり、筋肉が十分についていなかったりすると、足や手に負担がかかって脱臼する、あるいは骨折する危険性があります。延期になった期間、陸上練習で体をしっかり作っていきたいです」

 荒井にとって大学の授業がキャンパスで行われないのはつらい。健康・スポーツ科学部には体育実技がある。しかし、オンライン、オンデマンド授業の毎日なので、体を動かすことはできない。

「実技は気分転換になっていましたが、今、すべてが座学なのできついですね。気分を変えるために自転車で遠出することがあります」