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若いオリックスファンを「優勝を知らないまま」にしておいて良いはずがない

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/10/14

 流石にこれは拙いのではないか。

 新型コロナの影響で国際政治は大きく停滞している。11月に予定されていたG7主要国首脳会議は、アメリカ大統領選挙の混乱もあり開催の目途すらたっておらず、やはり同時期にサウジアラビアで行われる筈だったG20首脳会議も同様の状態になっている。欧州では再び新型コロナの感染が広がっており、今週には中国でも入国者を除き2カ月ぶりの感染者が見つかっている。先行きは依然暗い。

 この様な中、当然、筆者が研究の一つの対象とする日韓関係も動きが大きく止まっている。影響で、お陰様で筆者の仕事も随分減る事となっている。とはいえそれは筆者が困っている、という事ではない。時に誤解されているが、筆者程度のへぼ研究者であれば、例えば日韓関係でテレビ局等からお呼びがあってもいただける謝金等はスズメの涙。新幹線に乗って6時間以上かけて往復すれば、実質的な時間当たりの収入は最低賃金の遥か以下である。オンライン講義が続く中、授業負担は多いまま、忙しい日々が続いているので、寧ろ有難いくらいである。

信者以外には我々の信仰は知られてはならない

 しかし、その様な中、コンスタントに舞い込む「仕事」がある。言うまでもなく(?)、オリックス関係の仕事である。どうやらマスコミ等には秋になると、シーズンを振り返る習慣があるらしく、この「仕事」はこの時期になると多くなる。こうして筆者の研究室には、韓国政治について情報収集の為に訪れる情報機関の皆様と並んで、メディアのスポーツ担当の記者の方が訪れるという奇妙な風景が出現する。

 そして状況は遂に行きつくところまで行き、先日は遂に大阪にある、ロフトワンプラスウエストで「私たちオリファン委員会 -9月-」なるものに出演してきた。すぐ上の文書で「忙しい日々」と書いた後で、それで良いのか大学教授、と思う人もいるかも知れない。そこは心配していただかなくて大丈夫だ。東京と違って、大阪は自宅からすぐだし、何よりもイベントが行われるのは月曜日だから野球観戦と被る可能性はない。先日、京セラドームに行った際にも、球団関係者のHさんから「最早仕事ですから頑張ってください」と激励されたし、研究科長にも「オリックスは大目に見てやる」と言われたので、最早公式に認定された仕事の一部だと言って良いだろう。コロナ?出演者と観客併せて会場に10名以下の状況で、感染したら逆にびっくりするやろ。大丈夫か、ロフト。

 さて、何時ものように導入に無駄な文章を書いて字数を稼いで本題である。当日の出演者は筆者と、オリックスYouTuber のB-モレルさんと、お笑い芸人のブルーウェーブ住川さん。出演者が全員初顔合わせ、というイベントも珍しいと思うけど、会場に行って気づいたのはお二人ともとても若いという事。いいな、若いファン、いや自分が歳取っただけか。

 で、オリックスファン同士が集まれば、当然の様に交わされる定番の会話がある。そう「どうしてオリックスファンになったのか」である。幾度もこのコラムで書いている様に、例えば、大阪では阪神ファンが多数派なので、「どうして阪神ファンになったのか」という会話が交わされる事はない。大阪の阪神ファンは、大阪の人間は全て阪神ファンであるのが当然だと信じているからだ。更に言うなら、広島では「どうして広島ファンではないのか」という問いは存在しても、「どうして広島ファンになったのか」と問いはそもそも存在さえしないらしい。友人に確認したところ、この文章は広島弁としてそもそも文法的に間違っているのだそうだ。

 だからこそ、地元関西ですら少数派であるオリックスファンは、互いが同じオリックスファンである事を知ると、隠れキリシタンの様に信仰告白をしてお互いの信仰を深める事になっている。それこそが「どうしてオリックスファンになったのか」という問いであり、それに続く会話なのである。そしてそこで相手が少しでも口ごもる事があれば、我々は相手が「偽オリックスファン」であると疑う事になる。当たり前だ。オリックスファンなら、駅前で歌っているのがデビュー前のいきものがかりではなく坂口だったり、大阪湾で釣り糸が絡まって困っていたら解いてくれた優しいイケメンの兄ちゃんが岸田だったり、Costcoに行ってモレルから葡萄を買ったりするくらいの経験があって当然だからである。