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オードリー・若林正恭「東京にいると、自己肯定できなくなっちゃうでしょ」

キューバやコロナ後の東京を見て変わった“自意識”

2020/10/06
note

芥川賞受賞作『破局』の再読したくなる魅力

――若林さんといえば読書がお好きなことでも知られています。最近、読んで面白かった本を教えてください。

若林 いま、読んでいる最中の本は『禅ゴルフ―メンタル・ゲームをマスターする法』(ジョセフ・ペアレント、ちくま文庫)。パターを打つときに、「外れろ」って念じながら打つと入りやすくなるタイプと、「絶対入る」って思った方が入るタイプがいるんですって。面白いですよね。俺はしつこいんで、読んですぐ打ちっぱなしに行って、ずっと「外れろ」って思いながら打ちました。あんまり変わんなかったけど。

 小説ではなんだろなあ……。あ、芥川賞受賞作の『破局』(遠野遥、河出書房新社)だ。たまたま新幹線の帰りの電車で読み始めたんですけど、降りてからも新横浜のマクドナルドで最後まで読んじゃいました。主人公と同じ、僕がラグビー部出身だっていうのもあるんですけど、試合で勝つために最適化された人間の、最適化されたはずなのに逆に生まれた面倒くささがあって、そこに愛着も湧いちゃう、みたいな。いやあ、もう1回読みたくなっちゃいます。

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©️文藝春秋

――エッセイのあとがきでは、「コロナ後の東京」と題して、緊急事態宣言直前の銀座の様子を描いています。旅を通じて「血が通った関係と没頭」の価値にたどりついた若林さんですが、コロナによる価値観の変化についてどう思いますか?

若林 緊急事態宣言の頃は、自分でも不安になるぐらい、どんなふうに社会が変わっちゃうんだろうと思ったんです。でも、もうちょっと勉強しないとわかんないですけど、やっぱ新自由主義ってしぶとくて、戻ってきてる感じがします。まあ、高校時代の同級生とリモート飲みをしてても結局は、「直接会いたいね」って話になっちゃうんですけどね。

(撮影:平松市聖)

オードリー・若林正恭「東京にいると、自己肯定できなくなっちゃうでしょ」

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