彼が残した謎は、最後まで誰にも解けないのかもしれない。三浦春馬の出演ドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』第3話を見終えた後、そんなことを考えていた。
『天外者』(2020年12月公開予定)『ブレイブ 群青戦記』『太陽の子』(2021年公開予定)など幾つかの作品が年末から来年にかけて公開を控えているものの、このドラマは彼の最も「新しい」映像が残された作品になったのは報道でよく知られている通りだ。2020年7月18日、その日の前日までこのドラマは撮影され、そして制作は一時中断した。
『カネ恋』を見て思わずつぶやいた、「絶好調じゃないか」
ドラマを見て考えこんでしまったのは、残された映像の中の三浦春馬に憔悴や苦悩の影が見えたからではない。むしろ逆で、このドラマで猿渡慶太を演じる彼はあまりに明るく、生きるエネルギーに満ちあふれている。コメディタッチの作品の中で飄々とした御曹司の役をリズミカルにこなす演技は力強く、その表情にはユーモアと余裕さえ感じられる。
絶好調じゃないか。こんなことってあるのか? そう思わずにはいられなかった。
彼の死を伝える衝撃的な一報のあと、多くの報道記事がその理由をめぐり、なんとか大衆が納得できるような「物語」を組み立てようとした。私生活や生い立ちを調べ上げ、もう何年も前に周囲に漏らした悩みの言葉をまるで死の原因であるかのように意味づけようと試みた。だが「最後の映像」の中の三浦春馬は、それらの憶測が作るストーリーにまるでそぐわない、力強くエネルギッシュな輝きを放って見える。
彼はプロの俳優なのだから心の中の苦悩や葛藤を画面に出していないのだ、という見方はもちろんできる。もともと三浦春馬にとって、太陽のような明るさの中に暗く謎めいた影がある多面性は俳優としての一つの資質でもあった。
『コンフィデンスマンjp』のジェシーや、『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド』の「その男(ザ・マン)」のような複雑な人物像を演じる時、三浦春馬のそうした資質は、まるで異なる物質が化合した天然の鉱石のように深い色彩に輝き、その息を飲むような美しさで観客を惹きつけてきた。