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2020/10/06

 初回の放送前には、三浦翔平と佐藤健の2人が配信を行い、配信後に彼のドラマを見ることを告げた。そこでも語られたのは松岡茉優がラジオで語った言葉と同じ、「もしちょっとキツいなって人がいたら無理せずで結構ですので。またタイミングで観ていただければ、と思います」という言葉だった。

 松岡茉優はかつて『暮しの手帖』に「あなたに届くまで」という短いエッセイを寄稿したことがある。大きな規模の観客に向けて表現をするとき、ある人にとっての救いが別の人を傷つけることがありうるということについて書いた、彼女らしく繊細で美しい文章だった。

 松岡茉優も佐藤健も三浦翔平も、松岡茉優の語る「正解のない」矛盾の中で三浦春馬の最後の作品を送り出そうとしているように見えた。

三浦翔平 ©getty

亡くなった名優を物語の中に生かした名演出

『コード・ブルー』の劇場版映画の中で、浅利陽介演じる藤川一男が「田所先生」からの手紙を読み上げるシーンがある。2010年までその役を演じた老名優・児玉清は、映画の数年前に癌で亡くなっている。もはや出演はおろかナレーションもかなわない彼の声に代わり、浅利陽介が「手紙を読む」という演技によって、物語の中に生かす。

 大ヒット映画となり、すでに続編が予定される『コンフィデンスマンjp』シリーズで三浦春馬が演じたジェシー、竹内結子が演じたスタアといった人気キャラクターの扱いがどうなるのか、あるいは『カネ恋』の猿渡慶太が最終回でどうなるのか今はわからない。

 だが俳優は時に、その周囲の役者たちによって役として生きることができる。少なくとも三浦春馬が最後に演じた猿渡慶太という人物は、ドラマの制作者たちと松岡茉優の決断によって、この世界に生まれ落ちることができたのだ。 

 三浦春馬の著書『日本製』は初版出版時には緊急事態宣言で書店が休業し、店頭で買うことができなかった。その後、多くの人が彼の残した言葉に触れようと買い求めた結果、逆に売り切れで書店から消え、重版が並んだ8月には書籍ランキングの1位を獲得するまでになった。書籍の収益は彼が携わった社会活動に還元されることが所属事務所によって表明され、社会活動AAAも三浦春馬が慕い尊敬した先輩俳優、寺脇康文や岸谷五朗による継続が計画されている。

三浦春馬 ©getty

 俳優は不思議な職業だ。時に役を奪い合うライバルでありながら、彼らは作品の中で深くつながっている。松岡茉優が今後女優として活動を広げるたびに、過去の出演作は多くの人に参照され、彼女が2020年に主演したたった4話の連続ドラマ、そこで共演した輝くような笑顔の青年を未来の観客が発見するだろう。

 松岡茉優や佐藤健や三浦翔平が開く未来と、三浦春馬たちが残した過去の作品は、演劇という木によって繋がれている。その木が枯れることなく、生きて未来に枝を伸ばす限りは。

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