貴島 脚本、監督、そしてキャストのみなさんのおかげだと思います。撮影と脚本執筆は並行して進んでいるため、現場であったエピソードを脚本の徳尾浩司さんにお話しして、自然にキャストご本人の要素が2~3話先の脚本の反映していることもありました。
例えば、四宮要を演じて頂いた戸次重幸さんは、巷でも有名な“ミスター残念”という属性のある俳優さんで……(笑)。1話当初のシノさんよりも、最終話付近のシノさんは、戸次さんの要素を加えて頂いて、ちょっと天然で残念なシノさんに出来上がっていると思います。
「SNSが新たな指標だ!」という時代も過ぎてしまった
――『おっさんずラブ』がここまでの社会現象になった理由の1つにSNSでの反響もあったかと思います。最近では、SNSの口コミでその面白さが広がって世界的ヒットとなった『愛の不時着』も話題でした。
貴島 最初は韓国ドラマに不慣れで、とても話数が長いな……と思っていたのですが、途中から止まらなくなって、最終話では号泣していました(笑)。いま日本のドラマは一話完結ものも多いですが、16話という長いスパンで、連続した物語を魅せるというのは、やりがいと同時に大変な苦労があるだろうと、リスペクトの想いです。
ドラマの指標は常に変化していて、今は「SNSが新たな指標だ!」という時代も過ぎてしまった気がします。
――視聴率でもSNSのトレンドでもない?
貴島 ドラマにおける成功が何なのかは、未だわかりません。ただ、誰か1人の心でも、ちょっと明るくできればそれでよいのかも……と思うことにしています。物語に正解はないんだとしたら、作り手自身が“きっと視聴者の皆さまに楽しんでいただける作品である”と信じて、作り続けるしかないと思っています。
――次回作の準備も進んでいると聞いています。今度のドラマはどんな設定になりそうですか?
貴島 まだ詳しいことはお伝えできず恐縮ですが、こんな時代だからこそ、心が温まるドラマを作りたいなと思っています。誰かの“ちょっとダメ”な部分にも“いいんだよ”と言ってあげられるような、優しい作品をお届けできたらと思います。精一杯がんばりますので、是非ご覧いただけますと幸いです。
撮影=杉山秀樹/文藝春秋
きじま・さり/1990年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。
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