文春オンライン

〈武闘派「山健組」が2つ存在する異常事態〉神戸残留組の名門トップが「空席のまま」の理由

2020/10/10

genre : ニュース, 社会

note

〈今般 元神戸山口組々員 中田浩司(中略)右の者 当組の規約に反する行為此れ有り 令和二年九月十日付けをもちまして「除籍」致しました〉

 9月中旬、上記の一文が書かれた「除籍御通知」と題した書状が暴力団業界に出回った。文末には〈令和二年九月 神戸山口組 組長 井上邦雄〉とある。

家宅捜索が入った際の「山健組」本部事務所(神戸市、2005年9月) ©️時事通信社

 この書状で「元神戸山口組々員」と書かれているが、中田がかつての神戸山口組内最大勢力の武闘派組織「山健組」組長であることは、暴力団業界では知らぬ者はいない。

ADVERTISEMENT

 書状は、神戸山口組が中田を「除籍」処分にしたことを業界に通知する内容だが、中田の側も、すでに8月付で「御挨拶」と題する書状を出し、独立を宣言していた。

〈今般私儀 諸般の事情に鑑み神戸山口組を脱退いたす事を決意致しました〉

山健組が神戸山口組からの離脱することを伝えた書面

 このような応酬の末、中田率いる「山健組」の他に、神戸山口組に残留したグループも「山健組」を名乗ることが決定。いま、暴力団業界には、「2つの山健組」が存在する不穏な情勢となってしまったのだ。

現在も勾留中の「山健組」中田組長

 山健組は、山口組を全国組織に拡大させた田岡一雄が3代目組長を務めていた際に、若頭として田岡を支えた山本健一が創設した。最盛期の山健組は6000人規模の勢力を誇り、山口組内だけでなく暴力団業界ではブランド的存在だった。2015年8月の山口組分裂以降も、神戸山口組の中核組織として位置づけられてきた。