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 その山健組内で、今年7月ごろから神戸山口組から独立を目指すグループと、残留を主張するグループで断続的に話し合いが持たれてきた。しかし、結論は持ち越しとなるケースが多かった。

 それは中田が殺人未遂容疑で逮捕されていることも大きな要因だった。

暴力団関係者に出回った山健組の中田浩司組長の写真

 2019年4月、神戸市内の路上で、山健組若頭の與則和が刃物で切り付けられ、この事件の報復として組長の中田自身が同年8月に山口組弘道会系組員を銃撃。同年12月に逮捕されたのだ。

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 現在も勾留中ということもあり、中田の意志が伝わらない時期が長かったが、今年8月になって離脱を正式に表明。先に紹介した書状を出すに至り、神戸残留組の若頭の與ら最高幹部を「絶縁」、その他の幹部を「破門」「除籍」として業界に通知していた。

 井上が9月に出した中田への除籍処分は、独立したからだけではなく、中田が“神戸残留組”に出した「絶縁」「破門」などの処分に対する対抗措置とみられる。

神戸山口組内の山健組は「組長空席」

 神戸山口組内の山健組は組長を空席としている。山健組の事情に詳しい指定暴力団幹部は、次のように指摘する。

「親分の下に若い衆が集まって組織となるから、通常は組長の空席はありえない。神戸山口組内の山健組の組長を空席にしているのは中田に復帰の意志があれば、除籍処分を取り消して神戸山口組に迎え入れる意思があるとも受け取れる。『中田が戻ってくるのを待つ』という意味もあるのではないか」

6代目山口組の司忍組長 ©️時事通信社

 ただ、今回の山健組の分裂については疑問を呈する。

「従来的な考えなら、神戸山口組から中田らの山健組が離脱した段階で、中田は神戸側から何かしらの処分が出されて当然だった。しかし、中田の方が自分に付いてこなかった神戸残留派を先に処分した。それも『絶縁』など重い処分だった。その後に、神戸山口組側が中田の処分を出した。順序が全く逆なのだ。こんな前例はないのではないか。それも『除籍』という比較的軽い処分。やはり戻ってこいというメッセージなのかもしれない」(同前)