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作業員は情報弱者

 佐藤のように高額な日当をもらっている作業員はごく少数である。同時期、日立系列は作業員に直接100万円の危険手当を支給したという話もあったが、ウラは取れていない。いわき平のハローワークで調べた通り、1Fで働く作業員の多くは、死と隣り合わせの過酷な労働の割に低賃金である。会社の体質や作業内容、それぞれのスキルにもよるが、もともと1Fで働いていた作業員たちでも日当2万~4万円あたりが相場で、平均、約12時間拘束される。毎日現場に出れば、月給120万円になる計算だが、若くてスタミナのある熟練工であっても月に20日が限度という。

「担当部署によって違うし、天気やその日の作業内容にもよるけど、どこも毎日6時間から8時間は作業しているだろう。酷暑の中、防護服に防塵マスクだから、ただ座っているだけでも疲労する。狭い場所では不自然なポーズのまま長時間作業しなきゃならないので体がもたない」(30代の作業員)

※写真はイメージ ©️iStock.com

 にもかかわらず、会社によっては交代要員がいないため休日がとれない。5月14日、不二代建設で働く60歳の作業員が熱中症によって死亡した後も労働環境の抜本的な改革は行われておらず、逆に労働時間は増えている。危険、汚い、休日もない3K職場の上、なんの保証もなく、あるのはただ将来の健康不安のみだ。私のような不純な動機ならともかく、なぜボイコットしないのか理解に苦しむ。

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「社長が好きだからですよ。恩もあるし。うちの社長、かっこいいんです。憧れなんです」

 ようやく打ち解けた佐藤は、いまだ現場で働き続ける理由をこう説明する。両者の精神的絆を噓とは言わないが、それだけが理由とも思えない。

 いわき湯本近辺を宿にしている作業員に密着しているうち、分かってきたことがある。作業員の多くは放射能に関する専門的な知識を持っておらず、毎日のニュースすら知ることが出来ない情報弱者という事実である。

「旅館のフロントに新聞は置いてあるけど、毎日疲れちゃって読む気がしない。テレビのニュースを録画しておきたいけど、部屋にビデオなんてない。インターネット? 携帯ならあるけど、パソコンなんて持ってきても無意味だ。ビジネスホテルならともかく温泉旅館にLANケーブルなんてない。元々みんな肉体労働してんだし、無線で繫ぐほどのマニアはいない」(協力企業の現場監督)

 実際、2011年7月初め、4号機の使用済み燃料プールの温度が上昇し、作業員に避難命令が出される直前だったのに、彼らの多くは深刻な事態だったと認識していない。