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「他の部署がなにやってんのか……1号機担当なら2号機や3号機、4号機がどうなってるのかさっぱりわからないし、知ったところでどうにもならない。あんまり考えすぎると作業が進まないからな。工程表通りに作業が進むわけがないけど、最小限の遅れで済ませたいと、誰もが思ってる。晩発性の癌? そんなこと考えたってしかたない。なるようにしかなんねぇよ」(いわき湯本を宿にしている協力会社社員)

 自分がどれほど危険な作業をしているか漠然としか理解していない上、新たな情報を得ることもできず、慣れが恐怖心を鈍化させるのだろう。誰に強要されたわけでもなく、自分の意思で現場に入っているのだから、自業自得・自己責任と結論づけるのは簡単だ。が、現場の過酷さを考えれば、作業後、または休日を使い、情報を得るための努力をしろと強いるのは酷である。

※写真はイメージ ©️iStock.com

任俠社長

 当時、火急の問題だった高濃度汚染水の処理が進まないのは、作業員にとっては幸いかもしれなかった。全体の作業は遅延するが、その分、状況を知り、将来を考える余裕が生まれるからだ。実際、現場作業の実質的な元請けには、新規の作業員を断っているところもある。

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「汚染水の処理が進まないと不可能な作業ってのがある。いま以上に人を入れたってすることがないんで、待ってくれと断られた。電力の出した工程表に遅れが出るのは間違いないけど、少しでも近づけたいから熟練工しか必要ないんだろう。交代させるときは『こいつら仕事できんのか?』としつこく訊かれるわね。

 その他、プラントメーカーのエンジニアたちもまだ出番じゃないから、ずっとJヴィレッジで待つしかない。日立は日立、東芝は東芝と、グループになって待機してんだけど、みんな暇を持てあましてる。知り合いのあんちゃんは『やることないんでPSPのモンハン(モンスターハンター)をクリアしちゃいました』って苦笑いしてたよ」(5次請けの協力会社社長)

 作業員の被曝限度が厳守されている前提なら、こうした格差は必然的なものと割り切ることもできる。が、フクシマ50でさえ、当時、装着していたフィルムバッジの値は公表されておらず、本人たちにも知らされていないのだ。1Fが立て続けに水素爆発を起こした当時、多くの作業員がオンタイムで被曝数値が分かるデジタル線量計を持っていなかった。最低限、本人にはフィルムバッジの数値を通達すべきだ。そうしない限り、被曝限度を越えた作業員を働かせているのではないか……という疑念は消えない。