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2020/10/25

source : 週刊文春WOMAN vol.3

genre : ライフ, 人生相談, ライフスタイル, 社会

中野信子の回答「大久保さんに男性がハマるのはとてもよくわかる」

A 大久保さんのご質問はとても構築的で、複数の文脈が層状に重なってできている、深みのある文と感じます。それを「支離滅裂ですいません」と謝られているのですが、文意を読み取れないのを読み手の力量のせいにせず、敢えてへりくだってお書きになっているのですね。

 こうした大久保さんの“深み”に男性がハマっていくのはとてもよくわかるような気がします。「全然タイプですよ」という表現は、それを口にするのが若い男性であることを暗に示唆しているとも取れますが、大久保さんは確信犯的にこうお書きになったのかもしれない、という可能性さえ窺われます。

 大久保さんの、少し“闇っぽい”とでも申しますか、こなれた余裕とでもいいましょうか、敢えての表現に女の深みを感じ、もっと奥深くに分け入っていきたい、と誘蛾灯に誘われるようにふらふらと寄っていく男性は少なくないでしょう。

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芸人が古来、担ってきた役割

 ところで、人の嫌なところを見つけるのは、脳では前帯状皮質という場所が行っています。ここは矛盾を見つけ出す領域です。ある意味、芸人はここを働かせながら、「空気に合わないことを言うな」「そんな情報要らんわ」とツッコんだりしているわけです。つまり、人の嫌なところを探して見つけられるのは、芸人としての才能とも職業病ともいえます。

 ポリティカルコレクトネスの支配する世の中です。誰もが誰かのアラを探し、ちょっとでも隙があれば攻撃しようと狙っています。アラのある人を攻撃する快感に、人は抗えないからです。一方でみな、そんな世の中に、内心では息苦しさを感じています。

 大久保さんのような方が「正直に言うのは憚られるけれども、本当のこと」を鮮やかに言語化して笑いに変えることで、人々は溜飲を下げ、社会は安定します。芸人は古来、そうした役割を担ってきました。人の嫌なところを見つけ、笑いを纏わせながら正直に言ってしまう。この能力を持った人が巧みに風穴を開けることで、社会は保たれてきたのです。

 それは若くて青い女の子には決して真似のできないものなのかもしれません。いいタイミングでダメ出ししてくれるような、百戦錬磨の女でなければ繰り出せない言葉の技術。そこに男性は魅かれるのではないでしょうか。