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“いらない労働”があふれる社会でどう豊かさを取り戻すか

気鋭の経済思想家が語る、環境問題に風穴を開ける新しい社会モデルとは?

2020/10/20

source : ライフスタイル出版

genre : ライフ, 社会, 読書, 歴史, SDGs

温暖化を過小評価するのは慰めになるから

斎藤 気候変動が人為的な理由から起きているというのは、世界の科学者たちの常識、コンセンサスになっています。人間社会の出す二酸化炭素は温暖化に影響がないなどと議論をしている人たちは、少なくとも国際会議やEUの政治の場にはいません。

 にもかかわらず、日本で温暖化問題を過小評価する議論が多いのは、それが慰めになるからです。自分たちのせいじゃない、太陽の活動の問題だから人間にはどうにもできない、だから、個々の生活を改める必要はないというように。このように、現実を直視することを避けていたほうが楽ですよね。

 もうひとつの事情として、日本ではCO2を減らそうという大義名分で原発が推進されてきた過去があるので、反原発の人たちは二酸化炭素温暖化説に対して懐疑的な立場をとっているというのがあります。

――たしかに環境問題に意識の高いはずの人たちが、温暖化問題には距離を置くというねじれの構造がありますね。

斎藤 でも、本来であれば原発の問題も気候変動の問題も、問題を一部の人々に負担を押しつける構造はまったく同じです。

 原発でいえば東京で使う電力を、危険な技術を使って福島の人たちに押しつけ、そこで出た核廃棄物を今度は北海道に押しつけようとしている。つまり都市部の人たちの放埓な生活のツケを、将来の世代や地方の人たちに回して、「外部化」している構造です。

 

――先進諸国が資源を収奪し、ごみ処理をグローバル・サウス(途上国)に押し付けてきた構図と同じ、ということでしょうか。

斎藤 その通りです。本来は、反原発と反気候変動というのは、同じ問題を扱っているはずなんです。便利な暮らしのために、危険なものを地方や途上国や未来の世代に残さないということ――これはさまざまなイデオロギーや立場を超えて科学的な見地に立って、みなが協調して取り組むべきことであって、環境正義の問題なんです。

 いま、中国、アメリカ、インド、ロシア、日本の5カ国だけで世界のCO2排出量の6割を占めています。環境負荷のかけ方が特定の国々に著しく偏っている実態があり、日本もその責任から免れられません。

 もう一つ馬鹿げた話があって、オックスファムの最新の研究によると、世界のトップ1%の富裕層が下半分の50%の人たちのなんと2倍ものCO2を出している。なかでも排出量が多いのは、0.1%の超富裕層です。彼らの世界各地の豪邸をプライベートジェットで転々とするようなライフスタイルをやめさせるだけで、CO2排出量は大幅に削減できるのです。

――超格差社会の驚くべき実態ですね。