「ウーチャカ(田中裕二の愛称)復活したぞー!」
こう爆笑問題・太田光が叫んだのは、新型コロナによる入院・療養から復帰したばかりの田中裕二を迎えた10月9日のタイタンライブ(及び『爆笑問題withタイタンシネマライブ』@時事通信ホール)でのことだった。
漫才は田中感染からスタート。療養中、田中が嗅覚の異常を感じたと口にするや、太田がすかさず瑛人の『香水』をフルで唄い出した。田中は2ヶ月間のブランクなどなかったように「なんで覚えてるんだよ、全部!」と切り返す。不倫問題で話題の瀬戸大也が使用したラブホテルが足立区にあったことと、「足立区が滅ぶ」発言で炎上中の白石正輝・足立区議を絡めるネタにも瞬時に対応。観客は爆笑問題の時事漫才を心ゆくまで楽しんだのだった。
爆笑問題は田中がいないとダメなんだ
この夜、僕は田中のツッコミに驚きを感じた。この驚きには二つあり、一つは立川談志がかつて述べていた「爆笑問題は田中がいないとダメなんだ」という持論を実感したということ。もう一つは、田中のツッコミがある種の熟練に深化しているということに対してだ。
周知の通り、田中は8月26日に妻の山口もえに続いて陽性反応が出て入院。9月7日に退院し、療養期間を経た後の9月20日にはテレビ復帰を『サンデー・ジャポン』(TBS系)で果たした。田中本人によれば、3週間の休養はコンビ結成初の出来事だった。
田中不在の間、ラジオは中山秀征、古舘伊知郎、伊集院光らが太田と共演。テレビはずんの飯尾和樹、ハナコの岡部大らが代役を務めていた。田中は自分のいない放送を視聴していたと、復帰ライブ後に楽屋で語ってくれた。
田中「見てましたよ。ホントに、代わりに出てくれたみんなに感謝です」
――アンガールズ田中卓志さんが太田さん単独出演に対して「アクセルだけしかない自動車が走るようなもの」と危惧してましたけど。
太田「そうだったね(苦笑)」
田中「みんな大変だったと思いますよ。ただでさえ、この人とやりづらいのに。心配したように暴走しなかったので良かったです」
これに対して、コロナはネタにしづらい社会的問題としながら、太田は「俺も大人なんだよ!」と笑いに変えていた。暴走はしなかったが、田中が言う「やりづらい」というのは小ネタ大ネタを速射砲ばりに打ち出す太田の言葉をキャッチ出来る人材がいないことを示している。野球で例えるなら、太田は時としてデッドボールや暴投、サイン通りに投げない荒れ球を持ち味にした投手なのだ。その証左になる太田と僕のやり取りを紹介したい。