淳 なかなか死なないって設定でも、「いやいや、もう死んどるやろ」って気持ちが離れる瞬間もあると思うんですけど。
小林 渡瀬さん演じる渡会は、不思議な説得力を持ってるんです。彼は持病があって、襲撃の最中に吐血してしまったり、そもそも死にかけの状態で行動してるんです。常に死と隣接してる人だから全然死ななくても、なんか自然なんです。
淳 なるほどね。
淳 ゾンビみたいになってますね。
小林 もう暴力の化身ですね。
淳 俺たちの身近にもそういう風が吹いてるのかもっていう、そういう恐怖心が感じられましたね。
小林 素敵ですね。
淳 素敵ですか。アッハッハッ(笑)。
小林 自分も渡会っていうキャラクターに触発されて、自主映画で「逆徒」っていう映画を撮りまして。不良のリンチで殺されてしまった男の子が生き返ってきて、そこから不良の抗争の不安を煽る装置みたいに漂うんです。こっちのグループに現れては暴力行為を働いて、また風のように飛んであっちのグループで人を刺したりして去っていく。
なぜバイオレンス映画に惹かれるのか?
淳 そもそも監督がバイオレンス映画に惹かれてるのってどうしてですか?
小林 本物の不良の子たちに出演してもらって映画を撮ってたんですけれども、そのとき、不良の子たちにインタビューをして脚本を書いたんです。最初は武勇伝を聞かされると思ってたんですが、全く逆で、不良構造の上の人たちから圧力を受けるっていう話が多かったんです。
淳 虐げられてるみたいな?
小林 そうなんです。それを聞いたときに、学校でも会社でも関係性が持つ暴力性そのものに似てるなと。人と人との関係にどうしても生じてしまう「どっちが上か?」みたいな、薄暗いものにすごく気が行くんです。
淳 そういうことか。
小林 不良の子たちに演技とかを付けると、ヒエラルキーが高い子ほど演技が上手くて。
淳 はいはい。
小林 ふだんから、下の不良の子たちには俺のことを舐めるなよっていう芝居をしてるし、上の人たちにはあんまりイジめると俺だって黙っちゃないんですよって見せている。不良の中で生き抜くバランスを取るための芝居を常に打ってるんですね。その芝居に失敗するとヒエラルキーから転落してしまうから。
淳 すごい分析! 良く気づきましたね。
小林 あっ、やっぱり意地悪なんで。勘ぐって見るのが好きで。