「おまえ、副長しといてなんやねん。おまえが行かんかいっ」
結局、竹中組古参の舎弟・安田三郎があいだに入って話を収めることになった。
「悟よ。おまえ、笹部の道具ほかしてもうたんかい」
「へえ」
「笹部が拾ってこい言うてるで」
「そうは言うても、叔父貴、ほかさんことには証拠も残るし、ワシも体かかってますやんか」
「まあ、それも道理やな。ほな、ワシがその道具を笹部に弁償したるわ」
と言ってくれた。
こうして始末した道具の代償をつけることで私との決着がついたが、かわいそうなのは小島である。
私が道具をほかしたことで、小島も別の意味で笹部に追い込まれてしまったのである。
「おまえ、副長しといてなんやねん。おまえが行かんかいっ」
この報復は本来なら道具を預かった小島が的を弾きに動き、私は見届け役に回るはずだった。襲撃メンバーで竹中組の直参は私ひとりだったからである。
それを私が先に道具を持って走ったため、小島はそばで見ているしかなくなり、結果として男を下げるかたちになってしまったのである。
じつはことが終わったとき、小島は「道具をこっちにくれ。兄貴に怒られるから」と私に言っていた。それを無視して、
「大西も『処分しろ』と言うてるし、そんなん渡せるかいな」
と私は道具をほかしてしまったのだ。小島にはいまも申し訳ない気持ちでいっぱいである。
その責任をとってか、小島は笹部の指令で別の戦闘に参加している。竹中正相談役の望月某という若衆が静岡で小西一家と揉め、その報復に小西一家本部の2階に上がり込んで猟銃をぶっ放したのだ。この件で小島は殺人未遂となり懲役8年を勤めている。
出所後、小島は正相談役からベンツを一台、祝儀としてもらったそうである。